Archive for the ‘ブログ’ Category

遺留分の侵害とその額の算定

2020-10-26

 被相続人による贈与や遺贈によって奪われることのない相続人に留保される相続財産についての一定の割合を遺留分と言います。

 兄弟姉妹以外の相続人は、
 ① 直系尊属だけが相続人となる場合は3分の1、
 ② それ以外の場合は2分の1が遺留分とされています(民法1028条)。

 この遺留分は、相続の開始した時に被相続人が有していた財産の価額に贈与した財産の価額を加えた額から債務の額を控除した額に基づいて算定されます(同法1029条1項)。

 ここで算入される贈与は、相続が開始する前1年間にされたものですが、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知っていたときは1年前に行われたものも算入されます(同法1030条)。

 そして、遺留分権利者及びその承継人は、遺留分を保全するのに必要な限度で遺贈及び贈与の減殺を請求することができます(同法1031条)。

 遺留分権利者及びその承継人の取得する額が遺留分の額に達しないときにその不足額が侵害額となります。この遺留分の侵害額の算定に関する裁判例を見ると、相続人のうちの一人に対し財産の全部を相続させる旨の遺言がなされた場合に関し、最高裁平成21年3月24日判決は、特段の事情のない限り、遺留分権利者の法定相続分に応じた相続債務の額を遺留分の額に加算することは許されないとしています。



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〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号 白金アエルシティ 白金タワー テラス棟4階
ひらま総合法律事務所 弁護士 平間民郎(Tel:03-5447-2011)

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遺言が無効となる場合

2020-10-19

 財産処分の方法として遺言が認められていますが、その効力が否定され無効となる場合があります。

 まず、遺言能力のない者による遺言は無効とされます。民法は15歳を遺言のできる年齢としており(民法961条)、15歳以上で意思能力があれば未成年者や被保佐人でも単独で遺言をすることを認めていますが、成年被後見人については意思能力を回復していることに加えて医師2名以上の立会いが必要としています(同法973条)。意思能力が問題となった裁判例を見ると、事理弁識能力を欠くとして遺言を無効とした事例(東京高裁平成12年3月16日判決等)がありますが、統合失調症であっても無効としなかった事例(最高裁平成10年3月13日判決)があります。

 また、内容が不特定・不明確な遺言は無効とされます。裁判例を見ると、全財産を「公共に寄付する」という遺言に関し、最高裁平成5年1月19日判決は、受遺者の特定を遺言執行者にゆだねたものとして有効としています。一方、遺産の全部をある者に任せるという遺言に関し、東京高裁昭和61年6月18日判決は、遺言者とその者との関係その他の状況から遺贈と解するのが困難であるとして無効としています。

 さらに、二人以上の者が同一の証書で行う共同遺言は無効(同法975条)とされます。裁判例を見ると、二人の遺言の一方に氏名を自書しないという方式違背がある場合に関し、最高裁昭和56年9月11日判決は、全体が無効としていますが、別人の遺言書が合綴されている場合に関し、最高裁平成5年10月19日判決は、それが各別の用紙に記載され、容易に切り離すことができるものであれば有効としています。



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婚姻・内縁の不当破棄による損害賠償

2020-10-12

 婚約、内縁は身分上の関係として婚姻と区別されます。しかし、これを不当に破棄すれば婚姻を破壊した場合と同様に損害賠償義務を負うことになります(民法709条、710条等)。

 婚姻に関する裁判例を見ると、長期間にわたり肉体関係が継続した事案に関し、最高裁昭和38年9月5日判決は、結納の授受や同棲がなかったとしても婚約が成立するとした上で、これを不当に破棄した者は慰謝料の支払義務を負うとしています。

 また、内縁に関し、最高裁昭和33年4月11日判決は、内縁を不当に破棄された者は、相手方に対し、婚約予約の不履行や不法行為を理由として損害賠償を請求できるとし、最高裁昭和38年2月1日判決は、第三者であっても内縁関係に不当に干渉してこれを破綻させた者は、不法行為による損害賠償義務を負うとしています。

 一方、住居・生計が別で子供の養育は男性側が行うという約定をして意図的に婚姻を回避していたという事案に関し、最高裁平成16年11月18日判決は、その継続について法的な権利・利益を有するとはいえないとして、その関係を突然かつ一方的に解消されたとしても不法行為による慰謝料の支払を請求できないとしています。



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不貞行為(不倫)に基づく不法行為責任

2020-10-05

 夫婦の一方が不貞行為(不倫)を行った場合、不貞行為に基づく不法行為責任が問題となります。

 そこで、この不貞行為による不法行為責任が問題になった裁判例を見ると、故意・過失が認められる限り、夫婦の一方と肉体関係を持った第三者は、相手方を誘惑するなどして肉体関係を持つに至らせたかどうか、両者の関係が自然の情愛によって生じたかどうかにかかわらず、他の配偶者の権利を侵害したとして不法行為責任を負います(最高裁昭和54年3月30日)が、夫婦の婚姻関係がその当時既に破綻していたときは、特別の事情のない限り、第三者は、他の配偶者に対して不法行為責任を負わない(最高裁平成8年3月26日判決)とされています。



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養育費の分担とその始期・終期

2020-09-28

 民法766条1項の「子の監護をすべき者その他監護について必要な事項」には養育費の分担が含まれるとされています。

 養育費をいつから分担するかについては、その支払いを請求する調停・審判の申立時からとしているケースが一般的なようです(東京家裁昭和54年11月8日審判、東京高裁昭和58年4月28日決定など)が、認知の審判が確定した直後に養育費の分担調停が申し立てられた事案に関し、大阪高裁平成16年5月19日決定は、認知された幼児の出生時に遡って養育費の分担額を定めています。

 また、養育費をいつまで負担するかについては、未成熟子にあたらなくなる20歳まで、または大学卒業までなどとするのが一般的なようですが、大学院の卒業までなどとするケースも多くなっているようです。



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子との面会交流とその許否の判断基準

2020-09-23

 民法766条1項の「子の監護をすべき者その他監護について必要な事項」には子との面会交流(面接交渉)が含まれ、「離婚の際に未成年の子の親権者と定められなかった親は、子の監護に関する処分の1つとして子との面接交渉を求めることができる」(東京高裁平成19年8月22日決定)とされています。

 そして、上記東京高裁決定は、「面接交渉が現実的に子の福祉に合致するかどうかという観点から判断されなければならない」とした上、「現在の状況において、未成年者らと申立方との面接交渉を実施しようとするときには、未成年者らに対して相手方に対する不信感に伴う強いストレスを生じさせることになるばかりか、未成年者らを父親である相手方と母親である抗告人との間の複雑な忠誠葛藤の場面にさらすことになるのであり、その結果、未成年者らの心情の安定を大きく害するなど、その福祉を害するおそれが高いものといわなければならない」として面接交渉の申立てを却下しています。



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婚姻費用とその分担の始期、その変更・取消

2020-09-14

 夫婦は、その資産、収入、その他一切の事情を考慮して婚姻から生ずる費用(婚姻費用)を分担する(民法760条)とされています。

 そして、婚姻費用とは、夫婦と未成熟の子によって構成される婚姻家族がその資産・収入・社会的地位等に応じた通常の社会生活を維持するのに必要な費用(大阪高裁昭和33年6月19日決定等)で、通常の衣食住の費用、子の教育費、子の出産費用、医療費などがこれにあたるとされています。

 いつからこれを分担するかについては過去にさかのぼった時点から支払いを命ずることができる(最高裁昭和40年6月30日決定)とされ、調停申立てなど権利者から義務者に対し請求した時点までさかのぼって請求できるとする(東京高裁昭和60年12月26日決定など)のが一般的なようです。

 また、調停が成立したり審判が確定した場合でも、その後にそれらの基礎となった事情に変化が生じたときは、婚姻費用分担義務の変更・取消の調停・審判をすることができる(大阪高裁昭和49年2月28日決定)とされています。

 なお、内縁の夫婦も婚姻費用の分担請求が可能(最高裁昭和33年4月11日判決)とされています。



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文書の提出命令・送付嘱託

2020-09-07

 裁判においては所持している文書を提出してその取り調べをしてもらうことになるところ、文書を所持していなくても文書提出命令や文書送付嘱託を申し立て証拠となる文書を取り調べることが考えられます(民事訴訟法219条、226条)。

 相手方当事者または第三者が提出義務を負う場合にはその相手方当事者または第三者に対し文書提出命令を申し立てることができます。また、文書の所持者に提出義務がなくても文書の送付嘱託を申し立てることができます。

 なお、文書提出命令の申立ては、文書の表示・趣旨・証明すべき事実・提出義務の原因を明らかにしてしなければならないとされています(同法221条1項)が、文書の表示・趣旨を明らかにすることが「著しく困難な場合」には文書の特定に必要な情報を開示する手続き(同法222条1項)の利用が可能です。



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地代借賃増減請求事件における調停前置主義

2020-08-31

 借地借家法11条の地代若しくは土地の借賃の額の増減の請求や同法32条の建物の借賃の額の増減の請求に関する事件について訴えを提起しようとする者は、まず調停の申立てしなければならない(調停前置主義)とされ(民事調停法24条1項)、同項の事件について調停の申立てをすることなく訴えが提起された場合に受訴裁判所はその事件を調停に付さなければならないとされています(同法24条2項本文)。

 このように地代借賃増減請求事件において調停前置主義が採用されているのは、少額訴訟が多いことや専門的な知識経験を有する調停委員の活用の必要性などに鑑み、訴訟による前にまず調停手続きを活用するのが好ましいためなどと言われています。

 なお、受訴裁判所が事件を調停に付することを適当でないと認めるときはこの限りではないとして(同法24条2項但書)、調停前置主義の例外を認めています。



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時効の利益の放棄と時効の完成の事実の認識

2020-08-24

 「時効の利益は、あらかじめ放棄することができない」と規定する民法146条の反対解釈から時効完成後の時効の利益の放棄は認められるとされているところ、この時効の利益の放棄といえるには時効の完成の事実の認識が必要かどうかという問題があります。

 この問題に関する裁判例を見ると、大審院大正4年3月11日判決や最高裁昭和35年6月23日判決などは、時効の利益の放棄には時効の完成の事実の認識が必要とした上で、時効の主張は時効の完成の事実を知ってこれをしたものと推定すると判示していましたが、最高裁昭和41年4月20日判決は、「時効完成の事実を知らなかったときでも、爾後その債務についてその完成した消滅時効の援用をすることは許されない」「けだし、時効の完成後、債務者が債務の承認をすることは、時効による債務消滅の主張と相容れない行為であり、相手方においても債務者はもはや時効の援用をしない趣旨であると考えるであろうから、その後においては債務者に時効の援用を認めないものと解するのが、信義則に照らし、相当である」と判示しています。



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