Archive for the ‘雇用・労働’ Category
証拠の申出とその撤回
裁判所に対し、証拠方法の取調べを要求する当事者の申立てを証拠の申出と言います。そして、この証拠の申出は、証明すべき事実を特定してしなければならない(民事訴訟法180条1項)とされています。
この証拠の申出に関する裁判例を見ると、最高裁昭和32年6月25日判決が、証人尋問の終了後は、その申請を撤回することができないとしています。また、最高裁昭和58年5月26日判決は、いったん裁判所の心証形成の資料に供された証拠について、その申出を撤回することは許されず、裁判所は申出人に有利か否かにかかわらず当事者双方に共通する証拠としてその価値を判断しなければならないとしています。
民間委託と国家賠償責任
行財政改革の一環として行政事務が民間に委託されることが増えていますが、事務を委託した国や公共団体の国家賠償法上の責任が問題となります。
この問題に関する裁判例を見ると、最高裁平成19年1月25日判決は、社会福祉法人が設置運営する児童養護施設の長は、本来都道府県が有する公的な権限を委譲されてこれを都道府県のために行使するものと解され、施設の職員等による養育監護行為は、都道府県の公権力の行使にあたる公務員の職務行為であるとして国家賠償法上の責任を認めています。
また、東京地裁平成19年11月27日判決は、家庭福祉員は区の公務員・被用者ではないとしながら、家庭福祉員の調査を怠り、虐待が続発するのを放置し、制度運営要綱所定の権限を行使しなかった点に過失を認め、その権限不行使が著しく合理性を欠く違法なものであるとして国家賠償法上の責任を認めています。
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ひらま総合法律事務所 弁護士 平間民郎(Tel:03-5447-2011)
民法715条、同法709条による使用者・被用者の責任と国家賠償法1条
民法715条や同法709条によって使用者や被用者が損害賠償責任を負うことがありますが、国や公共団体が国家賠償法1条1項に基づく責任を負う場合に公務員個人に対して直接損害賠償を請求できないとされている(最高裁昭和30年4月19日判決等)ことが上記の責任にどう関係するかが問題となります。
この点に関する裁判例を見ると、国・公共団体以外の者の被用者が第三者に損害を加えたが国・公共団体が同法1条1項に基づく損害賠償責任を負う場合について、最高裁平成19年1月25日判決は、被用者個人が民法709条に基づく損害賠償責任を負わないだけでなく、その使用者も同法715条に基づく損害賠償責任を負わないとしています。
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傷病により就業できない場合における給付金
勤務先の倒産等によって失職したことから失業の認定を受ける場合、公共職業安定所に出頭して職業の紹介を求めることになります(雇用保険法15条、雇用保険法施行規則22条)が、傷病等により継続して15日以上職業に就くことができなくなった場合、基本手当に代えて傷病手当が支給されます。
そして、この傷病手当の日額は、基本手当の日額に相当する額で、その支給日数は、基本手当の所定給付日数から既に支給を受けた基本手当の日数を差し引いた日数が限度とされています(以上につき、雇用保険法37条)。
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扶養されていた配偶者が離婚した後の年金
厚生年金に加入している夫の被扶養者となっている妻は、被保険者年金(厚生年金・共済年金)の被保険者の被扶養配偶者として国民年金の第3号被保険者になりますが、離婚して就職しない場合、国民年金の第1号被保険者になります。
そこで、この場合、第1号被保険者への種別変更の届出が必要になります(以上につき、国民年金法7条、12条等)。第1号被保険者の届出は、住所地の市区町村役場で行います。
そして、第1号被保険者になった月から保険料を納付することになります(同法87条等)。
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失業等給付を受給中に死亡した場合の遺族の受給権
失業等給付の支給を受けることができる者が死亡した場合においてまだ支給されていないものがあるときに未支給の保険給付を受けるべき者は、その未支給の失業等給付の支給を請求することができます。
そして、死亡した者の配偶者、父母、孫又は兄弟姉妹でその者の死亡の当時その者と生計を同じくしていた者がこの未支給の失業等給付を受けるべき者とされています(以上について雇用保険法10条の3)。
この未支給の失業等給付の請求は、受給資格者等が死亡したことを知った日の翌日から起算して1か月以内に行うことになりますが、受給資格者等が死亡した日の翌日から起算して6か月を経過したときには行うことができない(雇用保険法施行規則17条の2)とされています。
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事業の縮小のため解雇された場合の失業等給付
そして、その要件は、
①離職による被保険者資格喪失の確認を受けたこと
②労働の意思及び能力を有するにもかかわらず職業に就くことができない状態にあること
③特定受給資格者、特定理由離職者は、原則として、離職の日以前1年間に被保険者が6か月以上あること(雇用保険法13条、14条)で、事業の縮小や廃止などにより解雇された場合は、特定受給資格者となります(同法23条等)。
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勤務先を解雇された場合の厚生年金
厚生年金に加入している者が解雇された場合、解雇日の翌日付で厚生年金の被保険者の資格を喪失します(厚生年金保険法14条)。そして、新たな就職先がなければ、国民年金への種別変更の手続きをすることになります(国民年金法12条1項等)。
なお、厚生年金を適用している勤務先に就職した場合は、厚生年金に加入することになります(国民年金法7条1項、厚生年金法27条)。
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勤務先が倒産した場合の傷病手当金の受給
被保険者資格を喪失した後も、
①資格を喪失した日の前日まで引き続き1年以上被保険者で、
②資格を喪失した際、傷病手当金を受給している者は、傷病手当金を支給開始日から起算して1年6か月を限度として受給することができます(健康保険法104条、99条2項)。
なお、在職中は勤務先を経由していましたが、退職後は保険者に直接申請することになります。
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希望退職に応募して退職した場合の労災給付
労災保険の給付を受ける権利は退職によって変更されず(労働者災害補償保険法12条の5第1項)、このことは希望退職に応募して退職した場合にも妥当します。そして、退職後に休業補償給付を受給する場合は、所轄の労働基準監督署長に請求書を提出します(労働者災害補償保険法施行規則13条1項)。
なお、業務上負傷し又は疾病にかかった労働者が療養を開始してから1年6か月を経過しても、①当該負傷等が治癒せず②当該負傷等による障害の程度が傷病等級に該当するときは、傷病補償年金を支給されます(労働者災害補償保険法18条等)。
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