Archive for the ‘個人法務’ Category

嫡出推定の及ばない子

2021-12-20

   妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定する(民法772条)とされているところ、どのような場合に上記の推定が及ばないかが問題となることがあります。

   この問題に関する裁判例を見ると、最高裁平成10年8月31日判決は、子の出生する九箇月余り前に夫婦が別居していても、別居後出生までの間に性交渉の機会を有したほか、婚姻費用を分担するなどの調停を成立させ夫婦間に婚姻の実態が存しないことが明らかであったとまでは言い難い場合には推定を受けない嫡出子とはいえないとしています。

   また、最高裁平成12年3月14日判決は、夫と妻との婚姻関係が終了してその家庭が崩壊しているとの事情があっても、その一事をもって嫡出否認の訴えの提起期間経過後に親子関係不存在確認の訴えをもって父子関係を争うことはできないとしています。


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内縁の破棄についての損害賠償責任

2021-12-13

   実質上婚姻生活をしていながら届出を欠くために法律上の夫婦と認められない場合を内縁と言うところ、この内縁の不当破棄についての損害賠償が問題となります。

   この内縁の不当破棄についての損害賠償に関する裁判例を見ると、最高裁昭和33年4月11日判決は、内縁を不当に破棄された者は、相手方に対し婚姻予約の不履行を理由として損害賠償を求めることができるとともに不法行為を理由として損害賠償を求めることもできるとしていますが、最高裁平成16年11月18日判決は、16年にわたる関係で二人の子供がいる男女関係であっても、住居も生計も別で原告が子供の養育にも一切かかわりを持たず両者が意図的に婚姻を回避していたこと等の事情がある場合には、関係の存続に関し何らかの法的な権利ないし利益を有するものとはいえないとして突然かつ一方的解消を理由とする慰謝料請求を否定しています。


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協議上の離婚における離婚意思

2021-12-06

   民法は、夫婦の離婚原因について規定(同法770条)しているところ、この離婚原因がなくても、当事者間に離婚意思の合致があれば協議上の離婚をすることができます(同法763条)。

   この離婚意思の存否に関する裁判例を見ると、一方当事者の意思に基づかない離婚届が受理されたことによる協議離婚について、最高裁昭和53年3月9日判決は、その無効を確認する審判又は判決の確定を待つまでもなく当然無効であるとしています。また、別居中の妻の不知の間に夫が離婚届を提出した場合の追認について、最高裁昭和42年12月8日判決は、その後の調停において妻が離婚を認めることを前提に離婚慰謝料を受ける合意をしたときは、その調停の際に離婚を追認したといえるとしています。また、その翻意・撤回について、最高裁昭和34年8月7日判決は、合意により離婚届を作成した当事者の一方が届出を相手方に委託したのち翻意し戸籍係員にその翻意を表示していた場合、届出当時には離婚意思のないことが明確であるから相手方に対する翻意の表示又は届出委託の解除がなくとも届出は無効であるとしています。


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財産分与に含まれるもの

2021-11-29

   夫婦が離婚する場合、離婚をした者の一方は、相手方に対して財産分与を請求することができる(民法768条1項、771条)とされています。

   この財産分与に何が含まれるかが問題となった裁判例を見ると、最高裁昭和46年7月23日判決は、財産分与は夫婦が婚姻中に有していた実質上共同の財産を精算分配し、かつ、離婚後における一方の当事者の生計の維持を図ることを目的とするものであるが、離婚による慰謝料を含めることもできるとしています。また、最高裁昭和53年11月14日判決は、当事者の一方が過当に負担した婚姻費用の清算のための給付をも財産分与に含めることができるとしています。なお、財産分与と慰謝料との関係について、上記最高裁昭和46年7月23日判決は、財産分与には慰謝料を含めることもできるが、既になされた財産分与がそれを含めた趣旨とは解されないか、又はその額及び方法において不十分と認められるときには別個に慰謝料を請求できるとしています。


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使用者責任における「事業のために他人を使用する関係」

2021-11-22

   民法715条1項は、ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負うと規定しています。

   このある事業のために他人を使用する関係に当たるとされた事例に関する裁判例を見ると、元請負人が下請負人に対して指揮・監督する権利を保有し、両者にあたかも使用者・被用者のような関係が存在する場合(大審院昭和11年2月12日判決)、貸切自動車営業者の名義を承諾を得て借用し、貸切旅客運送業を行い、名義料・諸税費用を支払い、かつ名義貸与者のもとに起居し同人の倉庫に自動車を格納している場合(大審院昭和11年11月13日判決)、下請負人の被用者に対し、元請負人が下請負人と同様の指揮・監督をしていた場合(最高裁昭和45年2月12日判決)、兄が弟に兄所有の自動車を運転させこれに同乗して自宅に帰る途中、助手席で運転の指示をしていた等の事情がある場合(最高裁昭和56年11月27日判決)などにおいてこの関係に当たるとされています。


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土地工作物責任における瑕疵

2021-11-15

   民法717条1項は、「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害が生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う」と規定しています。

   この瑕疵があるかどうかが問題となった裁判例を見ると、大審院昭和12年7月17日判決は、電気事業者が電気工作物規程に従って桑樹の間を通して高圧電流を通ずる電線を架設したところ、後に桑樹が生育したためそれに登った者が感電死した場合には、外部の状況の変化に対応した安全な処置を尽くさなかった点に瑕疵があるとしています。また、最高裁昭和46年4月23日判決は、踏切道の軌道施設は保安設備と併せ一体として考察されるべきであり、見通しが悪く交通・列車回数が多く過去数度に及ぶ事故のあった電車の踏切に保安設備が欠けている場合は、土地の工作物たる軌道施設の設置に瑕疵があるとしています。


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前の遺言と後の遺言の抵触による遺言の撤回

2021-11-08

 遺言者は、いつでも、遺言の方式に従ってその遺言の全部又は一部を撤回することができます(民法1022条)。そして、前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす(同法1023条1項)とされています。

 前の遺言と後の遺言が「抵触」するかどうかが問題となった裁判例を見ると、大審院昭和18年3月19日判決が、金1万円を与える旨の遺言をした後、遺言者が右遺贈に代えて生前に金5000円を受遺者に贈与することとし受遺者もその後金銭の要求をしない旨を約した場合について、抵触するとし、また、最高裁昭和56年11月13日判決が、終生扶養を受けることを前提として養子縁組をした上その所有する不動産の大半を養子に遺贈する旨の遺言をした者が、その後養子に対する不信の念を深くし協議離縁をした場合について、抵触するとしています。

 一方、最高裁昭和43年12月24日判決は、遺言による寄附行為に基づく財団設立行為がされて両者が競合する形式になった場合においても、右生前処分の寄附行為に基づく財団設立行為がいまだ主務官庁の許可を得ずその財団が設立されていない場合について、抵触しないとしています。

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遺留分減殺請求権を行使できる期間

2021-11-01

 被相続人の処分によって奪われることのない相続人に留保された相続財産の一定の割合を遺留分と言いますが、この遺留分に基づく減殺請求については、「遺留分権利者が相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知ったときから一年間行使しないときは、時効によって消滅する」とされています(民法1042条)。

 この遺留分減殺請求権を行使できる期間に関する裁判例を見ると、減殺すべき贈与があったことを知った時の意義について、最高裁昭和57年11月12日判決は、贈与の事実及びこれが減殺できるものであることを知った時と解すべきであるから、遺留分権利者が贈与の無効を信じて訴訟上争っているような場合はこれに当たらないとしながら、被相続人の財産のほとんど全部が贈与されたことを遺留分権利者が認識している場合には、その無効を信じているため遺留分減殺請求権を行使しなかったことがもっともと首肯し得る特段の事情が認められない限り、右贈与が減殺できることを知っていたと推認するのが相当であるとしています。

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業務行為の違法性

2021-10-25

 刑法35条は、法令による行為とともに「正当な業務による行為は、罰しない」と規定しています。

 この業務行為の違法性が問題となった裁判例を見ると、宗教活動について、神戸簡裁昭和50年2月20日判決は、教会の牧師が刑罰法令に触れる行為をしながら救済を求めてきた少年に対し、自己省察をさせるため監督と指導に適当な教会に1週間程度隔離した行為は、手段方法においても正当であり、全体としての法秩序の理念にも反せず正当な業務行為として違法性を阻却されるとしています。

 また、弁護活動について、最高裁昭和51年3月23日判決は、弁護人が被告人の利益を擁護するためにした行為が本条の適用を受けるためにはそれが弁護活動のために行われたものであるだけでは足りず、行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮してそれが法秩序全体の見地から許容されるべきものと認められなければならず、その判断に際しては法令上の根拠を持つ職務活動が弁護目的達成との間に関連性があるか、被告人自身が行った場合に違法阻却が認められるかという諸点を考慮に入れるのが相当であるとしています。

 また、取材活動について、最高裁昭和53年5月31日決定は、報道機関が取材の目的で公務員に秘密漏示を唆しただけで違法性が推定されるものではなく、真に報道の目的から出たものでその手段・方法が法秩序全体の精神に照らし相当なものとして社会観念上是認されるものであれば正当な業務行為として違法性を欠くが、取材の手段・方法が刑罰法令に触れなくとも取材対象者の人格の尊厳を著しく蹂躙するような態様のものである場合には正当な取材活動の範囲を逸脱し違法なものであるとしています。

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自首による刑の減軽

2021-10-18

 罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に、自発的に自己の犯罪事実を申告し、その処分を求める意思表示を自首と言います。そして、自首が成立する場合、その刑は、任意的に減軽されます(刑法42条1項)。

 この自首の成否に関する裁判例を見ると、東京高裁平成7年12月4日判決は、人を殺した者が犯行直後に自首を決意しそのまま派出所に赴いたが警察官が不在であったため、さらに110番通報して自己の氏名・犯罪事実を申告した場合には、派出所出頭8分後、電話通報2分前にその妻が通報していたため既に捜査機関に被告人の犯罪事実が発覚していたとしても、自首したものといえるとし、最高裁平成13年2月9日決定は、拳銃所持・発射罪について、捜査機関に発覚する前に申告したときは、使用した拳銃について虚偽の事実を述べたとしても自首が成立するとしています。

 一方、東京高裁平成17年3年31日判決は、強盗の目的で被害者に暴行を加えて死亡させた者が暴行の動機・態様について隠して単なる傷害として警察に申告する行為は自首に当たらないとし、東京高裁平成17年6月22日判決は、自首そのものが犯人隠避行為に該当する場合は実質的にみて自己の犯罪事実の申告があったとは認められず、傷害致死の共同正犯者が他の共犯者の存在を隠ぺいするため単独犯行として警察に申告する行為は自首に当たらないとしています。

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