Archive for the ‘個人法務’ Category

裁判の土地管轄

2021-02-15

 訴訟を提起する場合にどの裁判所に提起するかを決める基準を管轄と言い、土地との関係で問題となる管轄を土地管轄と言います。

 この土地管轄に関し、民事訴訟法4条1項は、被告の生活の根拠地の裁判所に管轄権が認められる(普通裁判籍)としています。そして、この普通裁判籍は、自然人については住所(同条2項)、法人その他の社団・財団については主たる事務所または営業所の所在地、国については法務大臣の所在地(同条6項等)としています。

 また、不法行為に基づく損害賠償請求訴訟では不法行為が行われた土地(同法5条9号)、財産権上の訴訟では義務履行地(同法5条1号)を管轄する裁判所にも管轄権が認められます(独立裁判籍)。

 さらに、他の事件との関連から、本来管轄権の無い裁判所に管轄権が認められる場合があります(関連裁判籍、同法7条等)。

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ひらま総合法律事務所 弁護士 平間民郎(Tel:03-5447-2011)

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離婚原因としての「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」

2021-02-08

 民法770条1項が離婚事由について規定しているところ、その5号は、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」と定めています。

 この離婚事由に関する裁判例を見ると、性格の不一致(東京高裁昭和54年6月21日判決)、性的不能(最高裁昭和37年2月6日判決)、夫の暴力(最高裁昭和33年2月25日判決)がこれにあたるとされています。

 また、訴訟上の和解において離婚に応じて離婚給付を受け取りながら協議離婚に応じない場合(大阪高裁昭和60年5月17日判決)、夫に自省の機会を与えて離婚請求を棄却したが、その2審の和解手続において自省の跡が見られない場合(東京高裁平成8年7月30日判決)にこの離婚事由を認めています。

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遺産分割の効力

2021-02-01

 遺産の分割は、相続の開始した時に遡ってその効力を生ずる(遡及効、民法909条本文)とされています。また、この遺産分割の遡及効は、第三者の権利を害することができない(同条但書)とされています。そして、遺産の相続によって不動産に関する権利を取得した相続人は、登記を経なければ遺産の分割後に当該不動産につき権利を取得した第三者に対し、法定相続分を超える権利の取得を対抗できない(最高裁昭和46年1月25日判決)とされています。

 なお、登記実務では、遺産分割の合意があったときは、被相続人の登記名義のままで、直ちに各人名義の相続登記をすることができる(昭和19年10月19日民事甲692号回答)とされています。

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遺言執行者の解任請求

2021-01-25

 遺言者は、遺言で遺言執行者を指定し、または、その指定を第三者に委託することができる(民法1006条1項)とされています。また、遺言執行者が指定されていないときまたはなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によって遺言執行者を選任する(同法1010条)と規定されています。

 そして、この遺言執行者は、その任務を怠ったときその他正当の事由があるときは、利害関係人は、その遺言執行者の解任を家庭裁判所に請求することができる(同法1019条1項)とされています。

 そこで、この解任の事由が問題となった裁判例を見ると、遺言内容の実現に関する事務について適正な処理を怠ったこと(名古屋高裁昭和32年6月1日決定、福岡家裁大牟田支部昭和45年6月17日審判)、相続人の一部との意見の対立のため不公正等の感情をいだかせたこと(東京高裁昭和44年3月3日決定)は解任の事由となりうるとされていますが、相続人の協力を得られないことなどから円滑な職務執行が妨げられた場合に解任の事由を否定(広島高裁松江支部平成3年4月9日決定等)しています。

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離婚原因としての不治の精神病

2021-01-18

 民法770条1項が離婚原因について規定しているところ、その4号は、「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」と規定しています。

 この離婚事由が問題となった裁判例を見ると、入退院を繰り返していてもその都度日常生活に支障のない程度に回復しているときはこの離婚事由に該当しない(東京高裁昭和47年1月28日判決)としたものがあります。

 また、最高裁昭和33年7月25日判決は、離婚請求の裁量棄却(同法770条2項)とこの離婚事由との関係に関し、諸般の事情を考慮し、病者の今後の療養、生活等についてできる限りの具体的方途を講じ、ある程度において前途に、その方途の見込みのついた上でなければ、離婚の請求は許さないとしています。

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特別縁故者に対する相続財産の分与

2021-01-12

 相続人としての権利を主張する者がいない場合に被相続人と生計を同じくしていた者やその療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者に対し相続財産を与える制度(民法958条の3)があります。

 裁判例を見ると、特別縁故者である「被相続人と生計を同じくしていた者」について、事実上の養子(大阪家裁昭和40年3月11日審判)や継親子(京都家裁昭和38年12月7日審判)がこれにあたるとしたものがあります。

 また、「被相続人の療養看護に努めた者」について、従業員(大阪高裁平成4年3月19日決定)や妻の弟(広島高裁平成15年3月28日決定)がこれにあたるとしたものがあります。

 さらに、「その他特別の縁故があった者」について、特に財産上の援助をした者(大阪家裁昭和39年9月30日審判)や財産管理や身上監護をした者(名古屋家裁昭和48年2月24日審判、大阪高裁平成5年3月15日決定)がこれにあたるとしたものがあります。

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婚姻の届出と婚姻意思

2021-01-05

 婚姻をするためには婚姻の届出(婚姻届)が必要となるところ、代書・代印されたものであってもそれが本人の意思に基づくものであれば婚姻は有効に成立する(大審院昭和11年12月4日判決)とされ、当事者が事実上の婚姻関係にある場合には届出をしないという明確な意思があるのでない限り他方や第三者が本人名義で届け出ても有効に婚姻が成立するとした裁判例(富山地裁昭和40年3月31日判決)があります。

 また、婚姻意思に関し、最高裁昭和44年10月31日判決が、婚外子に嫡出性を付与するための便法に過ぎない場合には婚姻意思は認められず無効としている一方、最高裁昭和44年4月3日判決などは、その意思に基づいて届出が作成された以上、その後翻意や撤回など特段の事情がない限り当該届出の受理によって婚姻は有効に成立するとしています。

 さらに、最高裁昭和47年7月25日判決は、事実上の夫婦の一方が他方の意思に基づかずに婚姻届を提出した場合でも、追認により婚姻は届出の時から有効となるとしています。

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離婚原因としての不貞行為

2020-12-28

 婚姻の当事者が訴えによって婚姻の解消を求める場合に必要となる離婚原因について民法770条1項が規定しているところ、その中のひとつに不貞行為(同項1号)があります。

 不貞行為とは、配偶者のある者が、自由な意思に基づいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいい、相手方の自由な意思に基づくものであるか否かを問わない(最高裁昭和48年11月15日判決)とされています。

 裁判例を見ると、買春・売春(最高裁昭和38年6月4日判決)、強姦(最高裁昭和48年11月15日判決)も不貞行為になるとされています。

 なお、不貞行為の宥恕に関し、不貞行為の宥恕は民法770条2項の裁量棄却の資料になり得るが、離婚請求権を消滅させるものではないとするもの(東京高裁昭和34年7月7日判決)や宥恕後婚姻が破綻した場合に同条1項5号の離婚原因が認められる余地を認めるもの(東京高裁平成4年2月24日判決)があります。

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内縁関係の当事者が死亡した場合における財産分与

2020-12-14

 夫婦が離婚する場合、財産分与(民法768条)が問題となるところ、内縁関係の当事者の一方が死亡した場合にも上記規定が適用されるのかという問題があります。

 この問題に関する裁判例を見ると、その一方が死亡したことによって内縁関係が消滅した場合に関し、最高裁平成12年3月10日判決が、「離別による内縁解消の場合に民法の財産分与の規定を類推適用することは、純婚的法律関係の保護に適するものとしてその合理性を承認し得るとしても、死亡による内縁解消のときに、相続の開始した遺産につき財産分与の法理による遺産清算の道を開くことは、相続による財産承継の構造の中に異質の契機を持ち込むもので、法の予定しないところである。

 また、死亡した内縁配偶者の扶養義務が遺産の負担となってその相続人に承継されると解する余地はない」として、民法768条の類推適用を否定しています。

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道路の設置・管理の瑕疵と国又は公共団体の責任

2020-11-30

 国家賠償法2条1項が「道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる」と規定していることから、国道等の設置・管理の瑕疵に関して上記の責任が問題となります。

 そこで、この瑕疵が問題となった裁判例を見ると、過去にしばしば落石・崩土があり管理者が「落石注意」という標識を立てる等していた国道を走行中のトラックに岩石が落下して運転者が死亡した事案に関し、最高裁昭和45年8月20日判決が、設置・管理の瑕疵は、「営造物が通常有すべき安全性を欠いていること」であるとした上で、道路管理の瑕疵を認めています。

 また、国道において87時間にわたって放置されていた故障車に原動機付自転車が衝突したという事案に関し、最高裁昭和50年7月25日判決は、「道路の安全性を著しく欠如する状態であった」として、道路管理の瑕疵を認めています。

 一方、工事中の道路に設置されていた赤色灯標柱等を他車が倒した直後に通行した自動車が事故を起こした事案に関し、最高裁昭和50年6月26日判決は、遅滞なく原状に復し道路を安全良好な状態に保つことは不可能であったとして、道路管理の瑕疵を認めていません。

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