Archive for the ‘男女問題’ Category
嫡出推定の及ばない子
妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定する(民法772条)とされているところ、どのような場合に上記の推定が及ばないかが問題となることがあります。
この問題に関する裁判例を見ると、最高裁平成10年8月31日判決は、子の出生する九箇月余り前に夫婦が別居していても、別居後出生までの間に性交渉の機会を有したほか、婚姻費用を分担するなどの調停を成立させ夫婦間に婚姻の実態が存しないことが明らかであったとまでは言い難い場合には推定を受けない嫡出子とはいえないとしています。
また、最高裁平成12年3月14日判決は、夫と妻との婚姻関係が終了してその家庭が崩壊しているとの事情があっても、その一事をもって嫡出否認の訴えの提起期間経過後に親子関係不存在確認の訴えをもって父子関係を争うことはできないとしています。
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内縁の破棄についての損害賠償責任
実質上婚姻生活をしていながら届出を欠くために法律上の夫婦と認められない場合を内縁と言うところ、この内縁の不当破棄についての損害賠償が問題となります。
この内縁の不当破棄についての損害賠償に関する裁判例を見ると、最高裁昭和33年4月11日判決は、内縁を不当に破棄された者は、相手方に対し婚姻予約の不履行を理由として損害賠償を求めることができるとともに不法行為を理由として損害賠償を求めることもできるとしていますが、最高裁平成16年11月18日判決は、16年にわたる関係で二人の子供がいる男女関係であっても、住居も生計も別で原告が子供の養育にも一切かかわりを持たず両者が意図的に婚姻を回避していたこと等の事情がある場合には、関係の存続に関し何らかの法的な権利ないし利益を有するものとはいえないとして突然かつ一方的解消を理由とする慰謝料請求を否定しています。
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協議上の離婚における離婚意思
民法は、夫婦の離婚原因について規定(同法770条)しているところ、この離婚原因がなくても、当事者間に離婚意思の合致があれば協議上の離婚をすることができます(同法763条)。
この離婚意思の存否に関する裁判例を見ると、一方当事者の意思に基づかない離婚届が受理されたことによる協議離婚について、最高裁昭和53年3月9日判決は、その無効を確認する審判又は判決の確定を待つまでもなく当然無効であるとしています。また、別居中の妻の不知の間に夫が離婚届を提出した場合の追認について、最高裁昭和42年12月8日判決は、その後の調停において妻が離婚を認めることを前提に離婚慰謝料を受ける合意をしたときは、その調停の際に離婚を追認したといえるとしています。また、その翻意・撤回について、最高裁昭和34年8月7日判決は、合意により離婚届を作成した当事者の一方が届出を相手方に委託したのち翻意し戸籍係員にその翻意を表示していた場合、届出当時には離婚意思のないことが明確であるから相手方に対する翻意の表示又は届出委託の解除がなくとも届出は無効であるとしています。
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財産分与に含まれるもの
夫婦が離婚する場合、離婚をした者の一方は、相手方に対して財産分与を請求することができる(民法768条1項、771条)とされています。
この財産分与に何が含まれるかが問題となった裁判例を見ると、最高裁昭和46年7月23日判決は、財産分与は夫婦が婚姻中に有していた実質上共同の財産を精算分配し、かつ、離婚後における一方の当事者の生計の維持を図ることを目的とするものであるが、離婚による慰謝料を含めることもできるとしています。また、最高裁昭和53年11月14日判決は、当事者の一方が過当に負担した婚姻費用の清算のための給付をも財産分与に含めることができるとしています。なお、財産分与と慰謝料との関係について、上記最高裁昭和46年7月23日判決は、財産分与には慰謝料を含めることもできるが、既になされた財産分与がそれを含めた趣旨とは解されないか、又はその額及び方法において不十分と認められるときには別個に慰謝料を請求できるとしています。
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当事者尋問における当事者の不出頭等と虚偽の陳述に対する過料
民事裁判において、当事者本人に尋問をする手続を当事者(本人)尋問と言い、民事訴訟法207条1項は、裁判所は、申立て又は職権で当事者本人を尋問することができるとしています。そして、同法208条は、その当事者が正当な理由なく出頭や宣誓・陳述を拒否したときに、裁判所は尋問事項に関する相手方の主張を真実と認めることができるとし、同法209条1項は、宣誓した当事者が虚偽の陳述をしたときは過料の制裁をうけるとしています。
この当事者尋問に関する裁判例を見ると、当事者の不出頭に関し、東京地裁平成14年10月15日判決が、尋問の必要性を判断するのは裁判所であり、不当な質問は裁判長の訴訟指揮によって制限できるのだから、原告の不出頭に正当な理由はなく尋問事項に関する被告の主張を真実と認めることができるとしています。また、過料の裁判を求める申立権に関し、最高裁平成17年11月18日決定は、過料の裁判は裁判所が職権によって行うものであり、訴訟当事者はその裁判を求める申立権を有しないとしています。
証拠の申出とその撤回
裁判所に対し、証拠方法の取調べを要求する当事者の申立てを証拠の申出と言います。そして、この証拠の申出は、証明すべき事実を特定してしなければならない(民事訴訟法180条1項)とされています。
この証拠の申出に関する裁判例を見ると、最高裁昭和32年6月25日判決が、証人尋問の終了後は、その申請を撤回することができないとしています。また、最高裁昭和58年5月26日判決は、いったん裁判所の心証形成の資料に供された証拠について、その申出を撤回することは許されず、裁判所は申出人に有利か否かにかかわらず当事者双方に共通する証拠としてその価値を判断しなければならないとしています。
調査の嘱託
民事裁判において、証拠の取調に関し多くの手続きがありますが、そのなかに調査の嘱託と言う制度が存在し、裁判所は、申立てまたは職権で、必要な調査を内外の官庁公署、学校、商工会議所、取引所その他の団体に嘱託することができる(民事訴訟法186条)とされています。
この調査の嘱託に関する裁判例を見ると、最高裁昭和45年3月26日判決は、調査の嘱託によって得られた結果を証拠とするには、裁判所がそれを口頭弁論で提示して当事者に意見陳述の機会を与えれば足り、当事者の援用を要しないとしています。また、大阪高裁平成19年1月30日判決は、調査嘱託として口座開設者の氏名住所等の個人情報の回答を求められた場合には、本人の同意の有無にかかわらず当然に回答する義務を負うが、これは裁判所に対する公的義務であって個々の依頼者が回答を求める権利を有しているのではないから、銀行が右情報につき回答を拒否しても不法行為の要件には該当しないとしています。
親権者とその子との利益相反行為
成年に達しない子は、父母の親権に服する(民法818条1項)とされていますが、親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為について、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない(同法826条1項)とされています。
この利益相反行為について、大審院大正10年8月10日判決は、単に親権者と未成年の子とが当事者となりその間になす法律行為のみに限らず、親権者のために利益にして未成年者のために不利益な法律行為を包括指称するとしています。
そして、この利益相反行為への該当性に関し、最高裁昭和37年10月2日判決は、親権者が子の名において金員を借り受け子の不動産に抵当権を設定することは、仮に借受金を親権者自身の用途に充当する意図であっても利益相反行為とはいえないが、親権者自身が金員を借り受けるに当たり子の不動産に抵当権を設定することは、仮に借受金を子の養育費に充当する意図であったとしても利益相反行為に当たるとし、最高裁昭和42年4月18日判決は、親権者が子を代理してした行為自体を外形的・客観的に考察して判定すべきであって、親権者の動機・意図をもって判定すべきでないとしています。
離縁原因としての悪意の遺棄・3年以上の生死不明
離婚について民法770条が悪意の遺棄・3年以上の生死不明を離婚事由としている(同条2号、3号)ところ、離縁についても同様の規定が置かれ、同法814条1号が、「他の一方から悪意で遺棄されたとき」、その2号が、「他の一方の生死が3年以上明らかでないとき」を離縁事由としています。
この離婚事由に関する裁判例を見ると、悪意の遺棄に関し、遺棄とは、現代における合理的養親子関係として養成される程度の精神的共同生活を破棄すること(大審院昭和13年3月24日判決)とされています。
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推定相続人の廃除原因
民法892条は、遺留分を有する推定相続人が被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができると規定し、同法893条は、遺言による推定相続人の廃除を規定しています。
そこで、この推定相続人の排除原因に関する裁判例を見ると、東京高裁平成4年12月11日判決が、虐待又は重大な侮辱について、被相続人に対し精神的苦痛を与え又はその名誉を毀損する行為であって、それにより被相続人と当該相続人との家族的協同生活関係が破壊され、その修復を著しく困難ならしめるものをも含むとしています。
一方、大審院大正11年7月25日判決は、老齢の尊属親に対する甚だしい失行があったとしてもそれが一時の激情に出たものである場合は重大な非違とはいえないとし、また、大審院大正15年6月2日判決は、父がその子を非道に待遇したためにその子の非行を誘発するようになった場合は廃除権が常に生じるものではないとしています。
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