Archive for the ‘社会福祉’ Category
公正証書遺言の方式
遺言は、公正証書によって行うことができる(民法906条)とされています。
そして、
①証人二人以上の立会があること(同条1号)、②遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること(同条2号)、
③公証人が遺言者の口授を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ又は閲覧させること(同条3号)、
④遺言者及び証人が筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名捺印すること(同条4号)、
⑤公証人がその証書は以上の方式に従って作成したものである旨を付記して署名捺印すること(同条5号)
がその方式とされています。
この公正証書遺言の方式が問題となった裁判例を見ると、①の証人の立会いについて、最高裁平成10年3月13日判決は、証人は、遺言者が本条4号所定の署名及び押印をするに際してもこれに立ち会うことを要するとしています。
また、②の口授について、最高裁昭和51年1月16日判決は、公証人の質問に対し遺言者が言語をもって陳述することなく、単に肯定又は否定の挙動を示したにすぎないときは口授があったとはいえないとしています。
また、③の読み聞かせ等について、最高裁昭和43年12月20日判決は、公証人があらかじめ他人から聴取した遺言の内容を筆記し公正証書用紙に清書した上、その内容を遺言者に読み聞かせたところ、遺言者が右遺言の内容と同趣旨を口授しこれを承認して右書面に自ら署名捺印した場合に本条の方式に違反しないとしています。
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推定相続人の廃除原因
民法892条は、遺留分を有する推定相続人が被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができると規定し、同法893条は、遺言による推定相続人の廃除を規定しています。
そこで、この推定相続人の排除原因に関する裁判例を見ると、東京高裁平成4年12月11日判決が、虐待又は重大な侮辱について、被相続人に対し精神的苦痛を与え又はその名誉を毀損する行為であって、それにより被相続人と当該相続人との家族的協同生活関係が破壊され、その修復を著しく困難ならしめるものをも含むとしています。
一方、大審院大正11年7月25日判決は、老齢の尊属親に対する甚だしい失行があったとしてもそれが一時の激情に出たものである場合は重大な非違とはいえないとし、また、大審院大正15年6月2日判決は、父がその子を非道に待遇したためにその子の非行を誘発するようになった場合は廃除権が常に生じるものではないとしています。
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相続の放棄の熟慮期間の起算点とその期間の伸長
民法915条1項は、相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に相続について単純もしくは限定の承認または放棄をしなければならないが、この期間は利害関係人、検察官の請求によって家庭裁判所において伸長することができるとしています。
この3か月という熟慮期間の起算点に関し、最高裁昭和59年4月27日判決は、被相続人に相続財産が全く存在しないと信ずるにつき相当な理由がある場合には、相続財産の全部または一部の存在を認識した時または通常これを認識し得るべき時から起算するとしています。
また、同法916条は、再転相続の場合につき、相続人が相続の承認又は放棄をしないで死亡したときは、熟慮期間は、その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から起算するとし、最高裁昭和63年6月21日判決は、甲の相続人につきその相続人乙が承認放棄をしないで死亡し、乙の相続人丙が乙の相続につき放棄をしていない場合に関し、甲の相続について放棄をすることができ、また、その後に丙が乙の相続を放棄しても、丙が先に甲の相続についてした放棄の効力がさかのぼって無効になることはないとしています。
なお、相続人が未成年者、成年被後見人であるときの熟慮期間は、その法定代理人が本人のために相続の開始があったことを知った時から起算する(同法917条)とされています。
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離婚原因としての「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」
民法770条1項が離婚事由について規定しているところ、その5号は、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」と定めています。
この離婚事由に関する裁判例を見ると、性格の不一致(東京高裁昭和54年6月21日判決)、性的不能(最高裁昭和37年2月6日判決)、夫の暴力(最高裁昭和33年2月25日判決)がこれにあたるとされています。
また、訴訟上の和解において離婚に応じて離婚給付を受け取りながら協議離婚に応じない場合(大阪高裁昭和60年5月17日判決)、夫に自省の機会を与えて離婚請求を棄却したが、その2審の和解手続において自省の跡が見られない場合(東京高裁平成8年7月30日判決)にこの離婚事由を認めています。
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遺産分割の効力
遺産の分割は、相続の開始した時に遡ってその効力を生ずる(遡及効、民法909条本文)とされています。また、この遺産分割の遡及効は、第三者の権利を害することができない(同条但書)とされています。そして、遺産の相続によって不動産に関する権利を取得した相続人は、登記を経なければ遺産の分割後に当該不動産につき権利を取得した第三者に対し、法定相続分を超える権利の取得を対抗できない(最高裁昭和46年1月25日判決)とされています。
なお、登記実務では、遺産分割の合意があったときは、被相続人の登記名義のままで、直ちに各人名義の相続登記をすることができる(昭和19年10月19日民事甲692号回答)とされています。
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遺言執行者の解任請求
遺言者は、遺言で遺言執行者を指定し、または、その指定を第三者に委託することができる(民法1006条1項)とされています。また、遺言執行者が指定されていないときまたはなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によって遺言執行者を選任する(同法1010条)と規定されています。
そして、この遺言執行者は、その任務を怠ったときその他正当の事由があるときは、利害関係人は、その遺言執行者の解任を家庭裁判所に請求することができる(同法1019条1項)とされています。
そこで、この解任の事由が問題となった裁判例を見ると、遺言内容の実現に関する事務について適正な処理を怠ったこと(名古屋高裁昭和32年6月1日決定、福岡家裁大牟田支部昭和45年6月17日審判)、相続人の一部との意見の対立のため不公正等の感情をいだかせたこと(東京高裁昭和44年3月3日決定)は解任の事由となりうるとされていますが、相続人の協力を得られないことなどから円滑な職務執行が妨げられた場合に解任の事由を否定(広島高裁松江支部平成3年4月9日決定等)しています。
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特別縁故者に対する相続財産の分与
相続人としての権利を主張する者がいない場合に被相続人と生計を同じくしていた者やその療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者に対し相続財産を与える制度(民法958条の3)があります。
裁判例を見ると、特別縁故者である「被相続人と生計を同じくしていた者」について、事実上の養子(大阪家裁昭和40年3月11日審判)や継親子(京都家裁昭和38年12月7日審判)がこれにあたるとしたものがあります。
また、「被相続人の療養看護に努めた者」について、従業員(大阪高裁平成4年3月19日決定)や妻の弟(広島高裁平成15年3月28日決定)がこれにあたるとしたものがあります。
さらに、「その他特別の縁故があった者」について、特に財産上の援助をした者(大阪家裁昭和39年9月30日審判)や財産管理や身上監護をした者(名古屋家裁昭和48年2月24日審判、大阪高裁平成5年3月15日決定)がこれにあたるとしたものがあります。
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離婚原因としての不貞行為
婚姻の当事者が訴えによって婚姻の解消を求める場合に必要となる離婚原因について民法770条1項が規定しているところ、その中のひとつに不貞行為(同項1号)があります。
不貞行為とは、配偶者のある者が、自由な意思に基づいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいい、相手方の自由な意思に基づくものであるか否かを問わない(最高裁昭和48年11月15日判決)とされています。
裁判例を見ると、買春・売春(最高裁昭和38年6月4日判決)、強姦(最高裁昭和48年11月15日判決)も不貞行為になるとされています。
なお、不貞行為の宥恕に関し、不貞行為の宥恕は民法770条2項の裁量棄却の資料になり得るが、離婚請求権を消滅させるものではないとするもの(東京高裁昭和34年7月7日判決)や宥恕後婚姻が破綻した場合に同条1項5号の離婚原因が認められる余地を認めるもの(東京高裁平成4年2月24日判決)があります。
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親権を行う父または母と子の利益相反行為
親権を行う父または母とその子との利益が相反する行為について、親権を行う父または母は、その子のための特別代理人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない(民法826条1項)とされています。
そこで、当該行為がこの利益相反行為に該当するかどうかが問題となった裁判例を見ると、子の財産を親権者に譲渡する行為は該当しますが、親権者から子に無償で財産を譲渡する行為は該当しない(大審院昭和6年3月9日判決等)とされています。
また、遺産分割は該当します(最高裁昭和49年7月22日判決)が、親権者が未成年者全員を代理して相続を放棄することは該当しない(最高裁昭和53年2月24日判決)とされています。
また、子のための特別代理人の権限が問題となった裁判例を見ると、親権者の一方のみと利益相反する場合、特別代理人と他方の親権者との共同代理となる(最高裁昭和35年2月25日判決)、選任された特別代理人と未成年者との間で利益が相反する場合、その特別代理人は付与された権限を行使できない(最高裁昭和57年11月18日判決)とされています。
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夫婦の同居義務と同居の拒否
夫婦は、同居し、互いに協力し扶助しなければならない(民法752条)と規定されているところ、この同居の拒否が問題となることがあります。
そこで、この同居の拒否に関する裁判例を見ると、同居を請求する側の暴力(大阪高裁昭和34年9月5日決定)や協力義務違反(東京高裁昭和40年7月16日決定)が同居を拒否できる事由になるとされています。また、婚姻が破綻して夫婦たるの実を失っていること(大阪高裁昭和62年11月19日決定)も同居を拒否できる事由になるとされています。
なお、夫婦間調整調停において、「夫婦は当分の間別居する」とするいわゆる別居調停が行われることがあります。
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