9月, 2021年

未決勾留日数の本刑への任意通算(裁定算入)

2021-09-27

 裁判所は、勾留状による拘禁である未決勾留の日数の全部または一部を本刑に算入することができる(刑法21条、任意通算)とされています。

 この任意通算の可否に関する裁判例を見ると、最高裁昭和30年12月26日判決は、同一被告人に対する数個の公訴事実を併合審理する場合に無罪となった公訴事実につき発せられた勾留状による未決勾留日数を他の有罪とした公訴事実の本刑に算入できるとし、最高裁昭和55年12月23日判決は、起訴されなかった住居侵入の事実についての未決勾留日数は、右と一罪の関係にある起訴された常習累犯窃盗の罪の本刑に算入できるとしています。

 一方、最高裁昭和32年12月25日判決は、未決勾留中の被告人が他事件の確定判決により懲役刑の執行を受けるに至ったときは、懲役刑の執行と競合する未決勾留日数を本刑に算入できないとし、最高裁昭和40年7月9日判決は、他事件につき本刑である自由刑に算入された未決勾留と重複する未決勾留を、更に本件の本刑に裁定算入又は法定通算することはできないとし、最高裁昭和50年7月4日判決は、起訴されていない被疑事実についての未決勾留は、起訴事件の捜査に利用されたとしても起訴事件の本刑に算入できないとしています。

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ひらま総合法律事務所 弁護士 平間民郎(Tel:03-5447-2011)


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常習累犯窃盗・強盗罪

2021-09-21

 盗犯等の防止及び処分に関する法律3条によって窃盗罪(刑法235条)、強盗罪(同法236条)等の加重事由とされているものとして常習累犯窃盗・強盗罪があります。

 これは、①常習として、窃盗(同法235条)、強盗(同法236条)、事後強盗(同法238条)、昏睡強盗(同法239条)の各罪またはその未遂罪を犯した者で、②その行為の前10年内にこれらの罪またはこれらの罪と他の罪との併合罪について、③3回以上、6月の懲役以上の刑の執行を受けまたはその執行の免除を得た者に対して刑を科すべきときは、④窃盗をもって論ずべきときは3年以上、強盗をもって論ずべきときは7年以上の有期懲役に処するとするものです。

 この常習累犯窃盗・強盗罪に関する裁判例を見ると、東京高裁昭和27年2月21日判決は、刑の執行を受けるという要件について、執行の着手があればよいとしています。また、大審院昭和14年7月14日判決は、犯人の罪が同時に刑法56条の累犯の要件を具備するときは、さらに累犯加重がなされるとしています。

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刑の執行猶予の要件

2021-09-13

 刑の言渡しをする場合において、情状によって一定期間内その執行を猶予し、その期間を無事経過したときに刑の言渡しはその効力を失うとする制度を執行猶予と言います(刑法25条等)。

 この執行猶予は、①前に禁固以上の刑に処せられたことがない者か、②前に禁固以上の刑に処せられたことがあってもその執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁固以上の刑に処せられたことがない者が、三年以下の懲役・禁固または五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときに情状により認められます。また、再度の執行猶予の場合はその要件が厳格になり、一年以下の懲役・禁固の言渡しを受けたときに情状に特に酌量すべきものがあるときに認められます。執行猶予の期間は、裁判確定の日から一年以上五年以下とされています(同法同条1項)。

 この執行猶予の要件に関する裁判例を見ると、「前に」の意味について、最高裁昭和31年4月13日判決は、執行猶予を言い渡す判決の以前にという意味であり、既に刑に処せられた罪が現に審判すべき犯罪の前後いずれは問わないとしています。また、「禁固以上の刑に処せられたことがない者」の意味について、最高裁昭和24年3月31日判決は、禁固以上の確定判決を受けたことのない者をいい、その執行を受けなかった者を意味しないとしています。

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未決勾留日数の法定通算

2021-09-06

 上訴提起期間中の未決勾留の日数は、上訴申立後の未決勾留の日数を除き全部これを本刑に通算するとされています。また、上訴申立後の未決勾留の日数も、検察官が上訴を申し立てたときおよび検察官以外の者が上訴を申し立てた場合において、その上訴審において原判決が破棄されたときは、全部本刑に通算するとされています(法定通算、刑事訴訟法495条)。

 この法定通算に関する裁判例を見ると、旧法事件について、最高裁昭和26年7月20日判決は、被告人が控訴し更に上告した事件において、上告審が第一審、控訴審判決を破棄、自判した場合には、第一審判決後の未決勾留日数は、すべて本刑に通算されるとしています。

 一方、最高裁昭和48年11月9日判決は、他事件の裁判確定によりその本刑に法定通算されるべき未決勾留と重複する未決勾留を本件の本刑に算入しても本件の裁判当時他事件の裁判が未確定の状態にあるときは直ちにこれを違法なものとはいえないが、後に他事件の裁判が確定し右勾留が本刑に通算されて刑の執行に替えられたときは、結局違法となるとしています。

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