Archive for the ‘インターネット’ Category

双務契約における同時履行の抗弁

2024-08-12

 民法533条は,「双務契約の当事者の一方は,相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは,自己の債務の履行を拒むことができる。ただし,相手方の債務が弁済期にないときは,この限りでない」として,債務の履行に代わる損害賠償債務を含めて双務契約における同時履行を規定しています。


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民事訴訟のIT化のための民事訴訟法の改正

2022-05-23

   民事訴訟のIT化を図る改正民事訴訟法が令和4年5月18日に成立しました。

   令和4年5月19日付読売新聞が「民事裁判 前面IT化へ」という表題でこのことを報じています。記事は、この改正の内容について「提訴から判決までの手続きをオンライン上でできるようにし、裁判の迅速化や利便性の向上を図る。改正法に基づき、訴状のインターネット提出や口頭弁論を「ウェブ会議」で行うことが可能になる。訴訟記録を原則電子化し、当事者は裁判所のサーバーにアクセスして、判決などを閲覧・ダウンロードできるようにする規定も盛り込まれた」と説明しています。

   なお、「弁護士をつけない「本人訴訟」では引き続き、紙での提訴などが可能」とされています。


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相続の廃除原因となる被相続人に対する虐待、重大な侮辱、著しい非行

2022-03-14

   民法892条は、①被相続人に対する虐待、重大な侮辱と②推定相続人の著しい非行を相続人が相続から廃除される事由としています。

   この相続の廃除事由を認めた裁判例として、東京高裁平成4年12月11日決定は、本条にいう虐待又は重大な侮辱は、被相続人に対し精神的苦痛を与え又はその名誉を害する行為であって、それにより被相続人と当該相続人との家族的協同生活関係が破壊されその修復を著しく困難ならしめるものをも含むとし、非行を繰り返した当該相続人が暴力団の一員であった者と婚姻し、父母が婚姻に反対であることを知悉していながら、披露宴の招待状に招待者として父の名を印し父母の知人等に送付した行為はこれに当たるとしています。

   なお、廃除事由が本条所定の事由に限られるかについて、名古屋高裁金沢支部昭和60年7月22日決定は、「右規定は一種の一般条項であるから廃除事由としては、虐待、侮辱行為に限定されず、そのほか遺留分を失うことが相当と判断される程度の有責行為であればその種類、内容は問わない」「廃除事由は、抽象的には、相続的共同関係を破壊するに足りる相続人の被相続人に対する重大な非行一般の趣旨に解することができ」としています。


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裁判において証明の必要がない顕著な事実

2021-06-07

 裁判において判決の基礎になる事実については証明が必要となりますが、証明なくして判決の基礎になるものとして「顕著な事実」(民事訴訟法179条)があります。

 この「顕著な事実」に関する裁判例を見ると、最高裁昭和28年9月11日判決が、「顕著な事実」は、公知の事実のほか、当該裁判所にとって職務上顕著な事実も含み、後者は必ずしも一般に了知されていることを要しないとしています。

 また、最高裁昭和31年7月20日判決は、構成員の過半数が共通の二つの裁判所に同一取引に関する民事・刑事の両事件が同時に係属する場合において、先になされた刑事判決の理由中で一定の事実を認定したことは他の裁判所にとって顕著であるから、当事者がこれと異なる事実についての自白を取り消し刑事判決の認定に沿う事実が真実に合致すると主張するときは、その真実性を判断するに当たり前記の顕著な事実をも資料としなければならないとしています。

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調査の嘱託

2021-05-24

 民事裁判において、証拠の取調に関し多くの手続きがありますが、そのなかに調査の嘱託と言う制度が存在し、裁判所は、申立てまたは職権で、必要な調査を内外の官庁公署、学校、商工会議所、取引所その他の団体に嘱託することができる(民事訴訟法186条)とされています。

 この調査の嘱託に関する裁判例を見ると、最高裁昭和45年3月26日判決は、調査の嘱託によって得られた結果を証拠とするには、裁判所がそれを口頭弁論で提示して当事者に意見陳述の機会を与えれば足り、当事者の援用を要しないとしています。また、大阪高裁平成19年1月30日判決は、調査嘱託として口座開設者の氏名住所等の個人情報の回答を求められた場合には、本人の同意の有無にかかわらず当然に回答する義務を負うが、これは裁判所に対する公的義務であって個々の依頼者が回答を求める権利を有しているのではないから、銀行が右情報につき回答を拒否しても不法行為の要件には該当しないとしています。

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親権を行う父または母と子の利益相反行為

2020-12-21

 親権を行う父または母とその子との利益が相反する行為について、親権を行う父または母は、その子のための特別代理人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない(民法826条1項)とされています。

 そこで、当該行為がこの利益相反行為に該当するかどうかが問題となった裁判例を見ると、子の財産を親権者に譲渡する行為は該当しますが、親権者から子に無償で財産を譲渡する行為は該当しない(大審院昭和6年3月9日判決等)とされています。

 また、遺産分割は該当します(最高裁昭和49年7月22日判決)が、親権者が未成年者全員を代理して相続を放棄することは該当しない(最高裁昭和53年2月24日判決)とされています。

 また、子のための特別代理人の権限が問題となった裁判例を見ると、親権者の一方のみと利益相反する場合、特別代理人と他方の親権者との共同代理となる(最高裁昭和35年2月25日判決)、選任された特別代理人と未成年者との間で利益が相反する場合、その特別代理人は付与された権限を行使できない(最高裁昭和57年11月18日判決)とされています。

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法律行為の一部無効

2020-07-13

 無効原因のある法律行為の効力は否定されるところ、法律行為の全部ではなく一部が無効となる場合があります(一部無効を規定する法として、利息制限法1条1項、同法4条1項、消費者契約法9条等)。

 この一部無効に関する裁判例を見ると、最高裁昭和56年3月24日判決が、会社の就業規則中の女子の定年年齢を男子より低く定めている部分を無効としています。また、最高裁平成元年12月14日判決が、前年の稼働率が一定水準以下の従業員を翌年度の賃上げ対象者から除外する労働協約条項のうち権利に基づく不就労を稼働率算定の基礎とする部分を無効とし、最高裁平成15年12月4日判決が、支給対象期間の出勤率が一定水準以上の従業員を賞与支給対象者とする就業規則条項のうち出勤した日数に産前産後休業日数及び勤務時間短縮措置による短縮時間分を含めないとする部分を無効としています。

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雇用契約における使用者の安全配慮義務

2020-04-13

 雇用関係において使用者と被用者の間にはさまざまな権利義務が生じるところ、使用者の義務として安全配慮義務が存在します。

 そこで、この使用者の安全配慮義務違反に基づく損害賠償が問題になった裁判例を見ると、受動喫煙に関し、東京地裁平成7月2日判決が、受動喫煙の危険性から職員の健康等を保護すべき安全配慮義務を認めた上で、「原告の被った精神的肉体的苦痛の内容、程度、期間等本件に顕れた諸般の事情にかんがみれば、原告に対する慰謝料の金額としては5万円をもって相当」と判示しています。

 また、労働者の自殺に関し、最高裁平成12年3月24日判決が、「使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負う」「使用者に代わって労働者に対し業務上の指揮監督を行う権限を有する者は、使用者の右注意義務の内容に従って、その権限を行使すべきである」として、使用者の責任を肯定しています。



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投資の勧誘における適合性原則、説明義務違反による責任

2020-04-06

 老後資金への不安などから投資を行う人が増加しているようですが、証券会社による取引の勧誘が問題となることがあります。

 そこで、証券会社による取引の勧誘に関する裁判例を見ると、適合性原則・説明義務違反が問題となった大阪高裁平成20年6月3日判決が、証券会社の適合性原則違反について「証券会社は、顧客の知識、経験及び財産の状況に照らして不適当と認められる勧誘を行って投資者の保護に欠けることとならないように業務を営まなければならず、証券会社の担当者が、顧客の意向と実情に反して、明らかに過大な危険を伴う取引を積極的に勧誘するなど、適合性の原則から著しく逸脱した証券等投資商品の取引の勧誘をしてこれを行わせたときは、当該行為は不法行為上も違法となる」、説明義務違反について「証券会社は、一般投資家を取引に勧誘することによって利益を得ているところ、一般投資家と証券会社との間には、知識、経験、情報収集能力、分析能力等に格段の差が存することを考慮すれば、証券会社は、信義則上、一般投資家である顧客を証券取引に勧誘するにあたり、投資の適否について的確に判断し、自己責任で取引を行うために必要な情報である当該投資商品の仕組みや危険性等について、当該顧客がそれらを具体的に理解することができる程度の説明を当該顧客の投資経験、知識、理解力等に応じて行う義務を負う」と判示しています。



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不法行為に基づく損害賠償請求と相殺の禁止

2020-03-09

 債権を相互に有する者の間では、相殺による処理が考えられます。ところが、不法行為に基づく損害賠償請求権については、被害者に現実の賠償を受けさせるため、「債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない」とされています(民法509条)。
 ただ、その被害者の救済という制度の趣旨から、被害者が損害賠償請求権を自動債権として加害者に対し負担している債務と相殺することは可能(最高裁昭和42年11月30日判決)とされ、また、契約により相殺することも可能(大審院大正元年12月16日判決)とされています。
 なお、双方の損害賠償請求権が交通事故のような同一事実によって発生した場合については、相殺による処理を認める説が有力ですが、最高裁昭和49年6月28日判決は、「同一交通事故によって生じた物的損害に基づく損害賠償債権相互間においても、民法509条の規定により相殺が許されない」と判示しています。



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