Archive for the ‘個人法務’ Category
試用期間と本採用の拒否
企業による労働者の採用において試用期間と本採用の拒否という問題があります。
この問題に関する裁判例を見ると、最高裁昭和48年12月12日判決(三菱樹脂事件)が、一定の合理的な期間解約権を留保する試用期間を定めることも合理性をもち有効であるとした上で、いったん特定企業との間で試用期間を付して雇用関係に入った者は、当該企業との雇用関係の継続の期待の下に他企業への就職の機会と可能性を放棄したものであることを考慮すると、右の留保解約権の行使は、解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認される場合にのみ許されるとしています。なお、契約の期間の定めか試用期間であるかが問題となった事案について、最高裁平成2年6月5日判決は、労働者の新規採用に当たり、その適性を評価・判断するために雇用契約に期間を設けた場合に、右期間の満了により契約が当然に終了する旨の明確な合意が成立しているなどの特段の事情が認められる場合を除き、右期間は契約の存続期間ではなく試用期間であると解するのが相当であるとしています。
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当事務所内で咲く花
採用内定とその取消の可否
企業による労働者の採用過程にはいくつかの段階があるところ、いわゆる採用内定という段階の法的性質やその取消の可否が問題となることがあります。
この問題に関する裁判例を見ると、最高裁昭和54年7月20日判決は、本件採用内定通知と誓約書の提出があいまって、企業と採用内定者との間に、就労の始期を大学卒業直後とし、それまでの間誓約書記載の取消事由に基づく解約権を留保した労働契約が成立したといえるとした上で、右の留保解約権に基づく採用内定の取消事由は、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であってこれを理由として採用内定を取り消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認できるものに限られるとしています。そして、最高裁昭和55年5月30日判決は、市公安条例等違反の現行犯として逮捕され、起訴猶予処分を受ける程度の違法行為をした事実が判明しこのことを理由になされた採用内定の取消しは、解約権留保の趣旨、目的に照らして社会通念上相当として是認することができるとしています。
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当事務所内で咲く花
労使慣行の法的効力
労働条件に関する事項などについて就業規則・労働協約に規定はないが労働者と使用者との間のルールになっているものを労使慣行と言います。
この労使慣行に関する裁判例を見ると、大阪高裁平成5年6月25日判決が、法的効力のある労使慣行が成立していると認められるためには、同種の行為又は事実が一定範囲において長期間反復継続して行われていたこと、労使双方が明示的にこれによることを排除・排斥していないことのほか、当該慣行が労使双方の規範意識によって支えられていることを要するとしています(最高裁平成7年3月9日判決はこの結論を是認しています)。
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代々木公園のナディア
就業規則の合理性と就業規則の拘束力
労働者の労働条件を決めるものとして就業規則が存在し、労働契約法7条は、「使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする」と規定しています。
上記の就業規則の合理性や拘束力が問題となった裁判例を見ると、最高裁昭和61年3月13日判決は、就業規則が労働者に対し一定の事項につき使用者の業務命令に服すべき旨を定めているときは、そのような就業規則の規定内容が合理的なものである限りにおいて当該具体的労働契約の内容をなしているものということができ、使用者はこの労働契約に基づいて業務命令を発することができるとしています。
また、最高裁平成15年10月10日判決は、就業規則が法的規範としての性質を有するものとして拘束力を生ずるためにはその内容を適用される事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要するとしています。
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代々木公園のナディア
労働組合の自主性
労働組合は、「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体」(労働組合法2条本文)と定義されているところ、同法はその但書1号において「使用者の利益を代表する者」が参加してはならないとしていることから、管理職組合などが本条の労働組合に当たるのかが問題となります。
この問題に関する裁判例を見ると、東京高裁平成12年2月29日判決が、使用者の利益代表者の参加を許す労働組合は、本条の要件を欠き労組法5条1項により労働委員会の救済手続を享受することはできないが、かような組合も使用者と対等関係に立ち自主的に結成された統一的な団体であれば同法7条2号の「労働者の代表者」に含まれるので、利益代表者の参加により適正な団体交渉の遂行を期し難い特別な事情を使用者において明らかにした場合は格別、当該組合に利益代表者が参加していたとしても、また参加していないことを使用者に対し明らかにしていないとしてもそのこと自体が団体交渉拒否の正当な理由になるものではないとして、本件組合は本条の労働組合に当たるとしており、最高裁平成13年6月14日決定は、この上告を棄却しています。
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代々木公園のナディア
労働組合法における「労働者」
労働に関するルールを定める法を労働法といいますが、この労働法の中に労働組合の組織と活動を規定する労働組合法が存在します。そして、同法の3条は、「労働者」について「職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活をする者」と定めているところ、この「労働者」への該当性が問題となります。
この労働組合法における「労働者」への該当性が問題となった裁判例を見ると、最高裁昭和51年5月6日判決は、民間放送会社とその放送管弦楽団員との間に締結された放送出演契約において、楽団員の他社出演が自由とされ、また、会社からの出演発注を断ることも文言上は禁止されていないという場合であっても、会社において必要とするときは随時その一方的な指定によって楽団員に出演を求めることができ、楽団員が原則としてこれに従うべき基本的関係が存在し、また、楽団員の受ける出演報酬が演奏の芸術的価値を評価したものというよりはむしろ演奏という労務の提供それ自体の価値とみられるなどといった事情が存在するときは、楽団員はこの「労働者」にあたるとしています。なお、この問題に関する比較的近時の最高裁判例として、最高裁平成23年4月12日判決や最高裁平成24年2月21日判決があります。
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嫡出推定の及ばない子
妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定する(民法772条)とされているところ、どのような場合に上記の推定が及ばないかが問題となることがあります。
この問題に関する裁判例を見ると、最高裁平成10年8月31日判決は、子の出生する九箇月余り前に夫婦が別居していても、別居後出生までの間に性交渉の機会を有したほか、婚姻費用を分担するなどの調停を成立させ夫婦間に婚姻の実態が存しないことが明らかであったとまでは言い難い場合には推定を受けない嫡出子とはいえないとしています。
また、最高裁平成12年3月14日判決は、夫と妻との婚姻関係が終了してその家庭が崩壊しているとの事情があっても、その一事をもって嫡出否認の訴えの提起期間経過後に親子関係不存在確認の訴えをもって父子関係を争うことはできないとしています。
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内縁の破棄についての損害賠償責任
実質上婚姻生活をしていながら届出を欠くために法律上の夫婦と認められない場合を内縁と言うところ、この内縁の不当破棄についての損害賠償が問題となります。
この内縁の不当破棄についての損害賠償に関する裁判例を見ると、最高裁昭和33年4月11日判決は、内縁を不当に破棄された者は、相手方に対し婚姻予約の不履行を理由として損害賠償を求めることができるとともに不法行為を理由として損害賠償を求めることもできるとしていますが、最高裁平成16年11月18日判決は、16年にわたる関係で二人の子供がいる男女関係であっても、住居も生計も別で原告が子供の養育にも一切かかわりを持たず両者が意図的に婚姻を回避していたこと等の事情がある場合には、関係の存続に関し何らかの法的な権利ないし利益を有するものとはいえないとして突然かつ一方的解消を理由とする慰謝料請求を否定しています。
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協議上の離婚における離婚意思
民法は、夫婦の離婚原因について規定(同法770条)しているところ、この離婚原因がなくても、当事者間に離婚意思の合致があれば協議上の離婚をすることができます(同法763条)。
この離婚意思の存否に関する裁判例を見ると、一方当事者の意思に基づかない離婚届が受理されたことによる協議離婚について、最高裁昭和53年3月9日判決は、その無効を確認する審判又は判決の確定を待つまでもなく当然無効であるとしています。また、別居中の妻の不知の間に夫が離婚届を提出した場合の追認について、最高裁昭和42年12月8日判決は、その後の調停において妻が離婚を認めることを前提に離婚慰謝料を受ける合意をしたときは、その調停の際に離婚を追認したといえるとしています。また、その翻意・撤回について、最高裁昭和34年8月7日判決は、合意により離婚届を作成した当事者の一方が届出を相手方に委託したのち翻意し戸籍係員にその翻意を表示していた場合、届出当時には離婚意思のないことが明確であるから相手方に対する翻意の表示又は届出委託の解除がなくとも届出は無効であるとしています。
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当事務所内で咲く花
財産分与に含まれるもの
夫婦が離婚する場合、離婚をした者の一方は、相手方に対して財産分与を請求することができる(民法768条1項、771条)とされています。
この財産分与に何が含まれるかが問題となった裁判例を見ると、最高裁昭和46年7月23日判決は、財産分与は夫婦が婚姻中に有していた実質上共同の財産を精算分配し、かつ、離婚後における一方の当事者の生計の維持を図ることを目的とするものであるが、離婚による慰謝料を含めることもできるとしています。また、最高裁昭和53年11月14日判決は、当事者の一方が過当に負担した婚姻費用の清算のための給付をも財産分与に含めることができるとしています。なお、財産分与と慰謝料との関係について、上記最高裁昭和46年7月23日判決は、財産分与には慰謝料を含めることもできるが、既になされた財産分与がそれを含めた趣旨とは解されないか、又はその額及び方法において不十分と認められるときには別個に慰謝料を請求できるとしています。
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