Archive for the ‘個人法務’ Category
錯誤の効果等についての民法の改正
錯誤の効果等について民法は改正を行っています。
① 95条1項は、「取り消すことができる」と規定して錯誤の効果を無効から取消へと変更しています。また、判断の要素について「法律行為の要素」と規定していたのを「その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるとき」へと変更しています。
② 同条2項は、「法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤」(同条1項2号、動機の錯誤)について「その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り」、取り消しが可能となることを規定しています。
③ 同条3項は、相手方が悪意・重過失の場合(1号)、共通錯誤の場合(2号)「の場合を除き」「錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には」「取消しをすることができない」と規定しています。
④ 同条4項は、「取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない」として第三者の保護について規定しています。
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詐害行為取消権の行使の方法等についての民法の改正
詐害行為取消権の行使の方法や被告について民法は改正を行っています。
① 詐害行為取消権は,「債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求する」権利(424条1項)であるところ,その被告は「受益者」又は「転得者」とされています(424条の7の1項)。
② そして,受益者を被告とする場合は,「債務者がした行為の取消しとともに,その行為によって受益者に移転した財産の返還を請求する」「受益者がその財産を返還することが困難であるときは・・・その価額の償還を請求する」ちし,転得者を被告とする場合は,「債務者がした行為の取消とともに,転得者が転得した財産の返還を請求する」「転得者がその財産の返還をすることが困難であるときは・・・その価額の償還を請求する」とされています(424条の6の1項)。
③ また,債権者が詐害行為取消訴訟を提起したときは,「遅滞なく,債務者に対し,訴訟告知をしなければならない」とされています(424条の7の2項)。
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債権の消滅時効についての民法・商法の改正
改正前の民法において,債権の消滅時効期間は原則として10年とされ,また,5年,3年,1年を時効期間とする短期消滅時効制度がありました。また,商法は,商事債権の消滅時効期間を5年としていました。さらに,時効の中断という制度がありました。ところが,これらの制度は,大きく改正されました。
① 改正民法166条1項1号は,「債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき」と規定して,債権の消滅時効期間を5年間としました(なお,債権者が権利行使をできる時をしらない場合については,同条同行2項で「権利を行使することができることを知った時から十年間行使しないとき」と規定して従前と同様に10年間としています)。また,商法における商事債権の消滅時効についての規定が削除されました。
② 人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権については,改正民法167条が「二十年間」とすると規定して,消滅時効期間を20年間としました。
③ 短期消滅時効についての規定は削除され,債権の消滅時効期間は5年間に統一されました。
④ 時効の中断が時効の完成猶予及び更新に変わりました(改正民法147条)。そして,同条は,その事由について「裁判上の請求」「支払督促」等と規定しました。
⑤ 改正民法151条が,「権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは」「時効は完成しない」と規定して協議を行う旨の合意による時効の完成猶予の制度を導入しました。
⑥ 改正民法161条が,「その障害が消滅した時から三箇月を経過するまでの間は,時効は,完成しない」と規定して天災等の場合における時効の完成猶予期間を3か月としました。
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賠償予定の禁止と留学費用の返還
使用者は,労働契約の不履行について違約金を定めたり損害賠償額を予定することを禁止されている(労働基準法16条)ところ,退職者に対する留学費用等の返還請求が本条に反しないかが問題とされることがあります。
この問題に関する裁判例を見ると,東京地裁平成10年9月25日判決は,念書その他の合意書を作成させることなく,就業規則に基づき留学費用の返還を請求しているとして同法16条違反としています。
一方,平成14年4月16日判決は,労働契約とは別の返還義務を免除するという特約つきの金銭消費貸借契約であるとして同法16条違反ではないとしています。
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有期の労働契約から無期の労働契約への転換
労働契約においては期間の定めのあるもの(有期労働契約)と期間の定めのないもの(無期労働契約)があるところ,2012年に労働契約法の改正によって有期労働契約から無期労働契約への転換に関する労働契約法の改正が行われました。
その改正は,同一の使用者との間の2つ以上の有期労働契約の通算契約期間が5年を超えている労働者が使用者に対し,契約期間の満了日までに無期労働契約締結の申込をした場合には,使用者はその申込みを承諾したものとみなされるというものです(労働契約法18条1項前段)。
大学教員,高度専門的知識等を有する労働者,定年後の継続雇用者についてはこの転換の申込が認められるようになるまでの期間が延長されています(大学教員任期法7条等)。
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保釈が許可される場合における「適当と認める条件」
被告人に対する勾留の執行を停止してその身柄拘束を解く裁判とその執行を保釈と言います。そして,この保釈を許すときには,納付すべき保証金額を定め(刑事訴訟法93条1項),また,被告人の住居を制限しその他適当と認める条件を附することができる(同法同条3項)とされています。
この保釈が許可される場合における「適当と認める条件」に関する裁判例を見ると,大阪高裁昭和63年9月9日決定は,「被告人は,弁護人を介さずして事件関係者に対し面接,電話,文書その他いかなる方法によるとを問わず一切接触しないこと」との条件を付すことは,本件事案の内容,公判審理の経過等にかんがみ適法であるとしています。
一方,福岡高裁昭和30年10月21日決定は,「適当と認める条件」とは,被告人の逃亡,罪証隠滅等を防止するとともに保釈後の被告人の公判出廷又は有罪判決確定後の刑の執行を確保するための条件を指称するとした上で,「保釈期間中他の犯罪を犯さぬよう謹慎していなければならない」との条件を付すことは違法であるとし,また,高松高裁昭和39年10月28日決定は,「本件公訴事実と同種犯行を行ったときは保釈を取り消すこと」との条件を付すことは違法であるとしています。
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誹謗中傷対策としての侮辱罪の法定刑の引き上げ
令和4年6月13日,侮辱罪の法定刑を「1年以下の懲役若しくは禁固若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」(刑法230条)とする「刑法等の一部を改正する法律」が成立しました。
法務省のホームページは,この法定刑の引上げの必要性について,「インターネット上の誹謗中傷が特に社会問題となっていることを契機として,誹謗中傷全般に対する非難が高まるとともに,こうした誹謗中傷を抑止すべきとの国民の意識が高まっている 近時の誹謗中傷の実態への対処として,侮辱罪の法定刑を引き上げ,厳正に対処すべきとの法的評価を示し,これを抑止するとともに,悪質な侮辱行為に対して厳正に対処することが必要」としています。
この規定は,同年7月7日から施行されます。
参照(外部リンク)
内閣府大臣官房政府広報室「政府広報オンライン」サイト 令和4年(2022年)4月8日 SNSの誹謗中傷 あなたが奪うもの、失うもの#NoHeartNoSNS(ハートがなけりゃSNSじゃない!)
ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)上での誹謗中傷等について紹介しています。
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労働契約の内容となる就業規則の合理性
労働者と使用者との間の労働契約について労働契約法7条は、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容はその就業規則で定める労働条件によるものと規定しています。
この就業規則の効力について、最高裁昭和61年3月13日判決は、就業規則が労働者に対し一定の事項につき使用者の業務命令に服すべき旨を定めているときは、そのような就業規則の規定内容が合理的なものである限りにおいて当該具体的労働契約の内容をなしているものということができるとしています。
また、会社の都合による特別な場合のほかは満65歳に達した日以後における最初の雇用契約期間の満了の日が到来したときは、それ以後雇用契約を更新しないと定める就業規則の合理性について、最高裁平成30年9月14日判決は、期間雇用社員について労働契約法にいう合理的な労働条件を定めるものであるとしています。
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時間外・休日・深夜労働についての割増賃金の支払い
使用者は、時間外・休日・深夜労働について割増賃金を支払わなければならない(労働基準法37条1項4号)とされています。そして、この割増賃金は、時間外労働の場合は通常の労働時間又は労働日の賃金の25%以上、休日労働の場合は35%以上(同法同条1項2項)、深夜労働の場合は通常の労働時間の賃金の25%以上(同法同条4項)とされています。
この割増賃金の支払いと通常の労働時間の賃金に支払いについて、裁判例は、支払いが通常の労働時間の賃金と割増賃金部分との判別が不可能な場合には割増賃金が支払われたとはいえないとしています(最高裁平成6年6月13日判決、最高裁平成24年3月8日判決、最高裁平成29年7月7日判決等)。
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職場環境への配慮等についての親会社の責任
使用者は、労働者の職場環境に配慮する義務を負うとされますが、グループ企業においては、子会社の職場環境についてコンプライアンスを統括する親会社の責任が問題とされることがあります。
この親会社の責任が問題となった裁判例を見ると、親会社が自社及び子会社等のグループ会社における法令遵守体制を整備し法令等の遵守に関する相談窓口を設け相談への対応を行っていたという事案に関し、最高裁平成30年2月15日判決は、親会社が子会社の従業員による相談の申出に求められた対応をしなかったことをもって信義則上の義務違反とはいえないとしています。
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