Archive for the ‘不動産’ Category

遺産分割の効力

2021-02-01

 遺産の分割は、相続の開始した時に遡ってその効力を生ずる(遡及効、民法909条本文)とされています。また、この遺産分割の遡及効は、第三者の権利を害することができない(同条但書)とされています。そして、遺産の相続によって不動産に関する権利を取得した相続人は、登記を経なければ遺産の分割後に当該不動産につき権利を取得した第三者に対し、法定相続分を超える権利の取得を対抗できない(最高裁昭和46年1月25日判決)とされています。

 なお、登記実務では、遺産分割の合意があったときは、被相続人の登記名義のままで、直ちに各人名義の相続登記をすることができる(昭和19年10月19日民事甲692号回答)とされています。

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ひらま総合法律事務所 弁護士 平間民郎(Tel:03-5447-2011)

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遺留分の減殺請求

2020-11-02

 遺留分の減殺請求権は、遺留分権利者が相続の開始および減殺すべき贈与・遺贈のあったことを知ったときから1年で消滅し、10年の除斥期間にかかる(民法1042条)とされていますが、遺留分の減殺請求は裁判外で行うことも可能とされています(最高裁昭和41年7月14日判決)。そして、遺贈、死因贈与、生前贈与という順序で減殺されます(同法1033条)。

 なお、被相続人の全財産が遺贈されたのに対し遺留分権利者が遺贈の効力を争わないで遺産分割を申入れた場合に関し、最高裁平成10年6月11日判決は、特段の事情がない限り、その申入れには遺留分減殺の意思表示が含まれているとしています。

 減殺請求を受けた受遺者・受贈者は、現物返還に代えて価額弁償をすることができる(同法1041条)とされ、最高裁平成12年7月11日判決は、価額賠償は、目的財産の各個につき許されるとしています。

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地代借賃増減請求事件における調停前置主義

2020-08-31

 借地借家法11条の地代若しくは土地の借賃の額の増減の請求や同法32条の建物の借賃の額の増減の請求に関する事件について訴えを提起しようとする者は、まず調停の申立てしなければならない(調停前置主義)とされ(民事調停法24条1項)、同項の事件について調停の申立てをすることなく訴えが提起された場合に受訴裁判所はその事件を調停に付さなければならないとされています(同法24条2項本文)。

 このように地代借賃増減請求事件において調停前置主義が採用されているのは、少額訴訟が多いことや専門的な知識経験を有する調停委員の活用の必要性などに鑑み、訴訟による前にまず調停手続きを活用するのが好ましいためなどと言われています。

 なお、受訴裁判所が事件を調停に付することを適当でないと認めるときはこの限りではないとして(同法24条2項但書)、調停前置主義の例外を認めています。

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時効の中断事由としての差押え、仮差押え、仮処分

2020-08-03

 時効の中断事由として、差押え、仮差押え、仮処分が規定されている(民法154条等)ところ、差押え等によって時効中断の効力が生じるのはいつか、また、時効中断の効力はいつまで続くのかという問題があります。

 まず、差押え等によって時効中断の効力が生じるのはいつかという問題に関する裁判例を見ると、動産執行に関し、最高裁昭和59年4月24日判決は、債権者が執行官に対し執行の申立をした時としていますが、金銭執行に関し、最高裁昭和43年3月29日判決は、債務名義に表示の住所に執行債務者が所在しないために執行が不能に終わった場合には、同金銭債権について時効中断の効力は生じないとしています。

 次に、時効中断の効力はいつまで続くのかという問題に関する裁判例を見ると、仮差押えに関し、最高裁平成10年11月24日判決は、仮差押えの執行保全の効力が存続する間は継続し、被保全債権につき本案の勝訴判決が確定しても仮差押えによる時効中断の効力が消滅するものではないとしています。また、最高裁平成6年6月21日判決は、仮差押解放金の供託により仮差押執行が取り消されても時効中断の効力は継続するとしています。

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土地区画整理法上の仮換地の取得時効

2020-07-20

 土地の所有権は取得時効の対象となるところ、その土地が土地区画整理法上の仮換地であるような場合、取得時効の成否はどうなるのかという問題があります。

 この問題に関する裁判例を見ると、最高裁昭和45年12月18日判決が、同法による仮換地の指定の後にこれを従前の土地所有の意思をもって占有をし始めたという事案に関し、換地処分が施行され同法所定の公告がなされる日までに要件を満たしたときは、時効によりその従前の土地の所有権を取得するとしています。

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賃借権・地上権の時効取得

2020-06-29

   所有権の時効取得について民法162条が規定しているところ、所有権以外の財産権である賃借権や地上権についても時効取得は認められます(同法163条)。

1  賃借権の時効取得に関して最高裁昭和43年10月8日判決は、「土地の継続的な用益という外形的事実が存在し、かつ、それが賃借の意思に基づくことが客観的に表現されているときは、民法163条に従い土地賃借権の時効取得が可能である」としています。そして、無断の転貸借に基づき土地を用益している事案につき最高裁昭和44年7月8日判決が、また、無効な賃貸借に基づき賃料を支払っていた事案につき最高裁昭和45年12月15日判決が賃借権の時効取得を認め得るとしています。

2  地上権の時効取得に関して最高裁昭和45年5月28日判決は、「土地の継続的な使用という外形的事実が存在するほかに、その使用が地上権行使の意思に基づくものであることが客観的に表現されていることを要し」としています。そして、杉等の立木の所有を目的とする事案につき最高裁昭和46年11月26日判決が、当該土地を継続的に使用し、かつ、その使用が地上権の行使の意思に基づくものであることが客観的に表現されていたとして地上権の時効取得を認めています。


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不動産の使用借権の喪失に基づく損害の評価

2020-04-20
 他人の不動産を利用する権利として賃借権や使用借権がありますが、使用借権の喪失による損害の評価が問題になることがあります。

 そこで、この問題に関する裁判例を見ると、土地上の建物が焼失したことによって土地の使用借権を喪失した事案に関し、最高裁平成6年10月11日判決が、「特別の事情のない限り、右土地使用に係る経済的利益の喪失による損害が発生するものというべきであり、また、右経済的利益が通常は建物の本体のみの価格(建物の再構築価格から経年による減価分を控除した価格)に含まれるということはできない」「少なくとも、焼失時の本件建物の本体の価格と本件土地使用に係る経済的利益に相当する額との合計額を本件建物の焼失による損害として被上告人に請求することができる」と判示しています。



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隣地通行権による自動車の通行

2020-03-30

  他人の土地を通行する権利として通行地役権や囲繞地(いにょうち)通行権 などがあるところ、このような権利によって自動車の通行が認められるかどうかが問題となることがあります。

 そこで、このことが問題となった裁判例を見ると、最高裁平成18年3月16日判決が、民法210条の囲繞地通行権に関し、「現代社会においては、自動車による通行を必要とすべき状況が多く見受けられる反面、自動車による通行を認めると、一般に、他の土地から通路としてより多くの土地を割く必要がある上、自動車事故が発生する危険性が生ずることなども否定することができない。

 したがって、自動車による通行を前提とする二一〇条通行権の成否及びその具体的内容は、他の土地について自動車による通行を認める必要性、周辺の土地の状況、自動車による通行を前提とする二一〇条通行権が認められることにより他の土地の所有者が被る不利益等の諸事情を総合考慮して判断すべきである」と判示しています。



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自動車の駐車による地役権の妨害

2020-03-23

 地役権のひとつとして通行地役権がありますが、自動車の駐車がこの通行地役権の妨害・侵害になるかどうかが問題となることがあります。
 そこで、このことが問題となった裁判例を見ると、団地内の道路での自動車の駐車による通行妨害について、最高裁平成17年3月2日判決は、「通行地役権は、承役地を通行の目的の範囲内において使用することのできる権利にすぎないから、通行地役権に基づき、通行妨害行為の禁止を超えて、承役地の目的外使用一般の禁止を求めることはできない」「本件係争地に車両を恒常的に駐車させて・・・車両の通行を妨害してはならない旨を求める限度で認容すべきであり」と判示しています。



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賃貸人による自力救済

2020-03-16

 賃貸借契約が終了したにもかかわらず、元の賃借人が目的物を任意に明け渡さない場合、目的物の所有者としては目的物の明け渡し等を求める訴訟を提起し、判決を得た上で強制執行により権利を実現することが考えられますが、このような法的手続きを経ずに目的物を取り戻す自力救済が行われることがあります。

 この自力救済について、最高裁昭和40年12月7日判決は、「原則として法の禁止するところであるが、法律に定める手続によったのでは、権利に対する違法な侵害に対抗して現状を維持することが不可能又は著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特段の事情が存する場合においてのみ、その必要の限度を超えない範囲内で、例外的に許される」としています。そして、目的物の所有者による自力救済行為に関する裁判例を見ると、不法行為の成立を肯定したもの(札幌地裁平成11年12月24日判決、東京地裁平成4年9月16日判決等)と否定したもの(横浜地裁昭和63年2月4日判決、東京地裁昭和62年3月13日判決等)があります。



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