Archive for the ‘相続’ Category

共有者の一部による共有物の排他的使用

2018-04-09

 共有者は、共有物につきそれぞれ持分を有することになりますが、共有者の一部がその持分の割合を超えた使用をしている場合に他の共有者が共有物の明渡を請求できるのかという問題があります。

共同相続により共有となった建物を共同相続人のうちのひとりが単独で占有している場合に他の共同相続人がその建物の明渡を請求した事案につき、最高裁昭和41年5月19日判決は、少数持分権者は、「他の共有者の協議を経ないで当然に共有物(本件建物)を単独で占有する権限を有するものではない」が、多数持分権者は、「共有物を現に占有する前記少数持分権者に対し、当然にその明渡を請求することができるものではない」として明渡請求を否定していますが、長年にわたり平穏に占有していた者が実力で排除するに等しい方法で占有を取得した者に対しその建物の明渡を請求した事案につき、仙台高裁平成4年1月27日判決は、「建物の共有持分権があっても右は権利濫用と評価されてもやむを得ないものであって、このような事情が存在する場合においては多数持分権者・・・の少数持分権者・・・に対する同建物の明渡請求は許されると解するのが相当である」と判示して明渡請求を肯定しています。

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相続人の共有財産の分割請求

2018-03-19

 遺産相続によって相続人の共有となった財産の分割は民法907条に基づく遺産分割の審判と民法258条に基づく共有物分割訴訟のいずれによるのかという問題があります。
 この点、相続人間で分割が問題になった場合について、最高裁昭和62年9月4日判決は、「遺産相続により相続人の共有となった財産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家事審判法の定めるところに従い、家庭裁判所が審判によってこれを定めるべきものであり、通常裁判所が判決手続で判定すべきものではない」と判示しています。
 一方、持分の譲渡を受けた第三者がいる場合について、最高裁昭和50年11月7日判決は、「第三者が右共同所有関係の解消を求める方法として裁判上とるべき手続は、民法907条に基づく遺産分割審判ではなく、民法258条に基づく共有物分割訴訟である」と判示しています。

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遺言の内容と異なる遺産分割協議

2018-03-12

 遺産に属する財産を共同相続人のうちの一人に遺贈するという遺言書がある場合、遺言をした者の死亡により、その財産は、受遺者に直ちに帰属することになりますが、その後に遺言の内容と異なる遺産分割協議が成立した場合に遺贈の効力が否定されるのかという問題があります。この点について、遺産に属する定期預金債権を共同相続人のうちの一人に遺贈するという内容の遺言とは異なる遺産分割協議が成立した事案に関する最高裁平成12年9月7日判決は、本件定期預金債権は遺言により特定遺贈されたもので本件遺産分割協議の対象とはされておらず、受遺者による遺贈の放棄はないのであるから、本件定期預金債権は遺言者の死亡によって直ちに受遺者に帰属したものであり、遺産分割協議が成立したということは遺贈の効力を左右しないとしています。

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遺産分割協議の法定・合意解除

2018-03-05

遺産分割協議において債務の負担について合意することがありますが、その債務の不履行を理由として遺産分割協議を解除することができるかという問題があります。
 この問題に関する裁判例を見ると、分割協議で合意された債務の不履行を理由として遺産分割協議を解除することはできないとしており、最高裁平成元年2月9日判決は、相続人のうちの一人が協議によって負担した債務を履行しなくても、債権を有する相続人は、民法541条により協議を解除することはできないとしています。
 これに対し、遺産分割の合意解除に関する裁判例を見ると、これはできるとしているようであり、最高裁昭和62年1月22日判決は、相続人らは、遺産分割協議のうち土地に関する部分を相続人全員の合意によって解除し改めて分割協議をしたものであり、2回目の分割協議による土地の共有持分の取得は地方税法73条の7第1号所定の「相続に因る不動産の取得」に該当するとし、また、最高裁平成2年9月27日判決は、共同相続人の全員が遺産分割協議の全部又は一部を合意により解除したうえ、改めて遺産分割協議をすることは、法律上当然には妨げられるものではないとしています。

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遺言書の偽造・変造等による相続欠格

2017-11-20

民法891条は、相続人となる資格を失う相続欠格事由につき定めているところ、遺言書の偽造・変造・破棄・隠匿がこの相続欠格事由のひとつとされています(同条5号)。

そこで、この遺言書の偽造等が問題となった裁判例をみると、最高裁昭和56年4月3日判決は、「被相続人の遺言書がその方式を欠くために無効である場合又は有効な遺言書についてされている訂正がその方式を欠くために無効である場合に、相続人がその方式を具備させることにより有効な遺言書としての外形又は有効な訂正としての外形を作出する行為は、同条5号にいう遺言書の偽造又は変造にあたるけれども、相続人が遺言者たる被相続人の意思を実現させるためにその法形式を整える趣旨で右の行為をしたにすぎないときは、右相続人は同号所定の相続欠格者にはあたらない」と判示しています。

また、最高裁平成9年1月28日判決は、「相続人の右行為が相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは、右相続人は、民法891条5号所定の相続欠格者には当たらない」「遺言書の破棄又は隠匿行為が相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは、これを遺言に関する著しく不当な干渉行為ということはできず、このような行為をした者に相続人となる資格を失わせるという厳しい制裁を課することは、同条5号の趣旨に沿わないからである」と判示しています。

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身寄りや資力のない人による成年後見制度の利用

2017-11-06

成年後見制度を利用する場合、費用を負担できる資力や申立てを行ってくれる親族などが必要になりますが、費用の負担が難しい人や身寄りのいない人が少なくありません。そこで、4親等内の親族がいない場合、市区町村長が申し立てをすることができるとされているところ、国民年金等を受給して特別養護老人ホームに入所している人につき成年後見を開始して社会福祉士を成年後見人に選任した事案につき非訟事件手続法26条により手続費用を市長に負担させている(大阪家裁平成14年5月8日審判)一方で、弁護士を成年後見人に選任した事案につき本人の資産内容を考慮して非訟事件手続法28条により手続費用を申立人である区長ではなく本人に負担させています(東京家裁平成14年5月14日審判)。

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高齢者などによる縁組意思を欠いた養子縁組

2017-10-23

養子縁組は、養親となるべき者と養子となるべき者との合意に基づく養子縁組届によって行われます(民法799条)が、財産的な法律関係を作出することのみを目的とする場合には縁組意思を欠くものとして養子縁組は無効とした裁判例(大阪高裁平成21年5月15日判決)があります。

また、判断能力が低下した高齢者の財産獲得を目的とする養子縁組がみられるところ、認知症を発症した高齢者の養子縁組を無効とした裁判例として東京高裁平成21年8月6日判決、名古屋家裁平成22年9月3日判決があります。

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相続財産と死亡退職金・生命保険金

2017-07-18

死亡を原因として遺族などに支払われるものとして死亡退職金と生命保険金がありますが、これらが相続財産に含まれるかどうかが問題になります。

まず、死亡退職金に関する裁判例を見ると、退職金に関する規程において死亡退職金の第1順位の受給権者は配偶者で配偶者がいるときには子は支給を受けないとされていた事案に関する最高裁昭和55年11月27日判決は、「右規程は、専ら職員の収入に依拠していた遺族の生活保障を目的とし、民法とは別の立場で受給権者を定めたもので、受給権者たる遺族は、相続人としてではなく、右規程の定めにより直接これを自己固有の権利として取得する」として「右死亡退職金の受給権は相続財産に属さ」ないとしています。また、退職金支給規程の存在しない財団法人の理事長が死亡した事案に関する最高裁昭和62年3月3日判決は、「死亡退職金は」「相続という関係を離れて・・・配偶者であった被上告人個人に対して支給されたものである」とした原判決を維持しています。

次に、生命保険金に関する裁判例を見ると、保険契約者が特定の相続人を受取人として指定している場合について、大審院昭和11年5月13日判決、最高裁昭和40年2月2日判決、最高裁平成16年10月29日判決は、保険契約の効力として、保険金請求権は、相続人の固有財産に属し相続財産にはならないとし、また、保険契約者が受取人を単に相続人と指定している場合について、最高裁昭和48年6月29日判決は、特段の事情がない限り、相続人全員の固有財産となり、相続財産から離脱するとしています。

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遺言書の検認と執行

2017-02-27

遺言書を保管している人や遺言書を発見した相続人は、相続の開始を知った後、遅滞なく家庭裁判所に遺言書を提出してその検認を請求しなければならない(民法1004条)とされています。

検認は、遺言書の現状を確定してその偽造、変造を防止し、その保存を確実にすることを目的としており、公正証書方式以外の方式によって作成された遺言書はすべて検認が必要となります。そして、遺言書の検認を請求する義務を負う相続人が遺言書を隠匿すると相続欠格となり(民法891条5号)、受遺者が遺言書を隠匿すると受遺欠格となります(民法965条、891条5号)。

ただ、遺言書の検認を経ないからといって遺言の効力が左右されるものではないとされており(大審院昭和3年2月2日判決)、検認を経ないで行われた遺言の執行も有効ですが、登記実務では、検認未了の自筆遺言書を相続証明書として添付した相続登記申請書は却下される(平成7年10月18日、法務省民事局第三課長通知)ようです。

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祭祀の主宰者の指定

2017-02-20

相続人は、被相続人に属した一切の権利義務を相続によって承継します(民法896条)が、系譜、祭具、墳墓などの祭祀財産は相続の対象からはずされて祭祀の主宰者が承継することになっています(民法897条)。

祭祀の主宰者は、

    ①被相続人による指定
    ②指定がないときはその地方の慣習
    ③指定がなく慣習も明らかではないときは家庭裁判所による指定

によって決まります。

そして、被相続人による指定の方法は生前行為でも遺言でもよく、また、書面。口頭のいかんを問わず、指定の意思が外部から推認されればよいとされているようです。

そこで、祭祀の主宰者の指定が問題となった裁判例を見ると、被相続人が生前にその全財産を贈与して家業を継がせた者を祭祀の主宰者と認定した名古屋高裁昭和59年4月19日判決や被相続人はその所有する墓碑に建立者として祭祀を承継させる者の氏名を刻んでその意思を明らかにしているとして墓碑に氏名を刻まれた者を祭祀の承継者とした長崎家裁諫早出張所昭和62年8月31日審判などがあります。

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