Archive for the ‘消費者’ Category

文書の提出命令・送付嘱託

2020-09-07

 裁判においては所持している文書を提出してその取り調べをしてもらうことになるところ、文書を所持していなくても文書提出命令や文書送付嘱託を申し立て証拠となる文書を取り調べることが考えられます(民事訴訟法219条、226条)。

 相手方当事者または第三者が提出義務を負う場合にはその相手方当事者または第三者に対し文書提出命令を申し立てることができます。また、文書の所持者に提出義務がなくても文書の送付嘱託を申し立てることができます。

 なお、文書提出命令の申立ては、文書の表示・趣旨・証明すべき事実・提出義務の原因を明らかにしてしなければならないとされています(同法221条1項)が、文書の表示・趣旨を明らかにすることが「著しく困難な場合」には文書の特定に必要な情報を開示する手続き(同法222条1項)の利用が可能です。

【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号 白金アエルシティ 白金タワー テラス棟4階
ひらま総合法律事務所 弁護士 平間民郎(Tel:03-5447-2011)

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地代借賃増減請求事件における調停前置主義

2020-08-31

 借地借家法11条の地代若しくは土地の借賃の額の増減の請求や同法32条の建物の借賃の額の増減の請求に関する事件について訴えを提起しようとする者は、まず調停の申立てしなければならない(調停前置主義)とされ(民事調停法24条1項)、同項の事件について調停の申立てをすることなく訴えが提起された場合に受訴裁判所はその事件を調停に付さなければならないとされています(同法24条2項本文)。

 このように地代借賃増減請求事件において調停前置主義が採用されているのは、少額訴訟が多いことや専門的な知識経験を有する調停委員の活用の必要性などに鑑み、訴訟による前にまず調停手続きを活用するのが好ましいためなどと言われています。

 なお、受訴裁判所が事件を調停に付することを適当でないと認めるときはこの限りではないとして(同法24条2項但書)、調停前置主義の例外を認めています。

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時効の利益の放棄と時効の完成の事実の認識

2020-08-24

 「時効の利益は、あらかじめ放棄することができない」と規定する民法146条の反対解釈から時効完成後の時効の利益の放棄は認められるとされているところ、この時効の利益の放棄といえるには時効の完成の事実の認識が必要かどうかという問題があります。

 この問題に関する裁判例を見ると、大審院大正4年3月11日判決や最高裁昭和35年6月23日判決などは、時効の利益の放棄には時効の完成の事実の認識が必要とした上で、時効の主張は時効の完成の事実を知ってこれをしたものと推定すると判示していましたが、最高裁昭和41年4月20日判決は、「時効完成の事実を知らなかったときでも、爾後その債務についてその完成した消滅時効の援用をすることは許されない」「けだし、時効の完成後、債務者が債務の承認をすることは、時効による債務消滅の主張と相容れない行為であり、相手方においても債務者はもはや時効の援用をしない趣旨であると考えるであろうから、その後においては債務者に時効の援用を認めないものと解するのが、信義則に照らし、相当である」と判示しています。

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裁判の期日における当事者の欠席

2020-08-11

   裁判の期日に当事者の一方ないし双方が欠席した場合に訴訟の促進や出席した当事者の利益を図るため、民事訴訟法はさまざまな規定を置いています。

   ①最初の口頭弁論期日に一方当事者が欠席した場合には同法158条が適用され、欠席者が提出していた準備書面等に記載した事項を期日に陳述したものとみなし、出席者の弁論とつきあわせて審理を進めます。

   ②続行期日に一方当事者が欠席した場合には同法158条の適用はありません(なお、簡易裁判所では続行期日でも同法158条が適用されます(同法277条)。

   ③期日に当事者双方が欠席した場合には同法263条が適用され、一月以内に期日指定の申立てをしないと取下擬制を認め、また、一月以内に期日指定の申立てをしても連続して2回その期日に欠席すると取下擬制を認めています。

   ④同法244条は、当事者の双方または一方が口頭弁論期日に欠席した場合には「審理の現状及び当事者の訴訟追行の状況を考慮して相当と認めるとき」には口頭弁論を終結して終局判決ができるとしています(ただし、一方当事者が欠席した場合に口頭弁論を終結して終局判決ができるのは出席した当事者の申出のあるときとしています)。


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時効の中断事由としての差押え、仮差押え、仮処分

2020-08-03

 時効の中断事由として、差押え、仮差押え、仮処分が規定されている(民法154条等)ところ、差押え等によって時効中断の効力が生じるのはいつか、また、時効中断の効力はいつまで続くのかという問題があります。

 まず、差押え等によって時効中断の効力が生じるのはいつかという問題に関する裁判例を見ると、動産執行に関し、最高裁昭和59年4月24日判決は、債権者が執行官に対し執行の申立をした時としていますが、金銭執行に関し、最高裁昭和43年3月29日判決は、債務名義に表示の住所に執行債務者が所在しないために執行が不能に終わった場合には、同金銭債権について時効中断の効力は生じないとしています。

 次に、時効中断の効力はいつまで続くのかという問題に関する裁判例を見ると、仮差押えに関し、最高裁平成10年11月24日判決は、仮差押えの執行保全の効力が存続する間は継続し、被保全債権につき本案の勝訴判決が確定しても仮差押えによる時効中断の効力が消滅するものではないとしています。また、最高裁平成6年6月21日判決は、仮差押解放金の供託により仮差押執行が取り消されても時効中断の効力は継続するとしています。

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土地区画整理法上の仮換地の取得時効

2020-07-20

 土地の所有権は取得時効の対象となるところ、その土地が土地区画整理法上の仮換地であるような場合、取得時効の成否はどうなるのかという問題があります。

 この問題に関する裁判例を見ると、最高裁昭和45年12月18日判決が、同法による仮換地の指定の後にこれを従前の土地所有の意思をもって占有をし始めたという事案に関し、換地処分が施行され同法所定の公告がなされる日までに要件を満たしたときは、時効によりその従前の土地の所有権を取得するとしています。

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法律行為の一部無効

2020-07-13

 無効原因のある法律行為の効力は否定されるところ、法律行為の全部ではなく一部が無効となる場合があります(一部無効を規定する法として、利息制限法1条1項、同法4条1項、消費者契約法9条等)。

 この一部無効に関する裁判例を見ると、最高裁昭和56年3月24日判決が、会社の就業規則中の女子の定年年齢を男子より低く定めている部分を無効としています。また、最高裁平成元年12月14日判決が、前年の稼働率が一定水準以下の従業員を翌年度の賃上げ対象者から除外する労働協約条項のうち権利に基づく不就労を稼働率算定の基礎とする部分を無効とし、最高裁平成15年12月4日判決が、支給対象期間の出勤率が一定水準以上の従業員を賞与支給対象者とする就業規則条項のうち出勤した日数に産前産後休業日数及び勤務時間短縮措置による短縮時間分を含めないとする部分を無効としています。

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著しく不公正な取引方法や著しく不公正な内容の契約条項と公序良俗違反

2020-07-06

 公序良俗に反する法律行為は無効とされている(民法90条)ところ、著しく不公正な取引方法や著しく不公正な内容の契約条項が公序良俗違反とならないかが問題となります。

 まず、著しく不公正な取引方法に関する裁判例を見ると、金地金の先物取引の委託契約が著しく不公正な方法による勧誘により締結された場合について、最高裁昭和61年5月29日判決が、商品取引所法違反かどうかを論ずるまでもなく公序良俗違反としています。

 次に、著しく不公正な内容の契約条項に関する裁判例を見ると、国内航空運送約款について、大阪地裁昭和42年6月12日判決が、乗客の死傷事故による損害賠償額を100万円に限定するのを公序良俗違反とし、また、借主の申入れにより弁済期前に支払った場合に借主は弁済期までの約定利息を支払わなければならないとする特約について、大阪高裁平成8年1月23日判決が、不当な約款で公序良俗違反としています。

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元本債務・利息債務の承認と相殺と債務の承認

2020-06-15

 時効の中断事由のひとつとして「承認」(民法147条3号、156条)が規定されているところ、どのような行為がこの「承認」にあたるかが問題となります。

 この点、債務の一部の弁済は、債務全体の承認とされます(大審院大正8年12月26日判決)。また、利息の支払いは、元本債務についての承認とされます(大審院昭和3年3月24日判決)。さらに、支払いの猶予や延期の懇請も債務の承認となります(大審院大正10年3月4日判決)。

 一方、他の事情が伴わない限り、相殺の意思表示に対し異議を述べなかったとしても債務を承認したことにはならない(大審院大正10年2月2日判決)し、利息債権についての強制執行に対し異議を述べなかったとしても元本債務を承認したことにはならない(大審院大正11年4月14日判決)とされています。

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転院による移送費と健康保険

2020-05-25

 入院先の病院から別の病院に移る場合、その要件をみたせば健康保険から移送費が支給されます。

 被保険者が療養の給付を受けるため、病院又は診療所に移送されたときは、保険者が必要であると認める場合に移送費が支給され(健康保険法97条、国民健康保険法54条の2)、保険者が必要と認める場合とは、

①移送により法に基づく適切な療養を受けたこと

②移送の原因である疾病又は負傷により移動をすることが著しく困難であったこと

③緊急その他やむを得なかったこと

 のいずれにも被保険者が該当する場合(健康保険法施行規則81条、国民健康保険法施行規則27条の10)とされています。

 そして、この移送費の額は、最も経済的な通常の経路及び方法により移送された場合の費用により算定した金額となりますが、実際に移送に要した費用の金額を超えることはないとされています(健康保険法施行規則80条、国民健康保険法施行規則27条の9)。

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