Archive for the ‘企業法務’ Category
時機に遅れた攻撃防御方法の却下
民事訴訟法156条は、攻撃又は防御の方法は「訴訟の進行状況に応じ適切な時期」に提出しなければならない(適時提出主義)とし、同法157条は、当事者が「故意又は重大な過失」によって「時機に遅れて提出した攻撃又は防御の方法」について、これを審理したのでは「訴訟の完結を遅延させる」場合に申立または職権で却下しうるとしています。
この「故意又は重過失」について、大審院昭和6年11月4日判決は、第一審の口頭弁論期日に出頭しなかったために主張しなかった抗弁を控訴審で提出したのに対し、その不出頭に対する帰責事由の有無を判断せずに右抗弁を却下した原判決は違法としています。また、「訴訟の完結を遅延させる」場合について、
東京高裁平成元年3月27日判決は、自白後弁論終結までの間にこれを撤回する機会が十分ありながら格別の措置をとることなく弁論の終結を迎え、その後弁論再開の申請と共にした自白撤回の申出は訴訟の完結を著しく遅延させる時機に遅れたものとしています。なお、最高裁昭和30年4月27日判決は、申請された検証がたとえ一定の要証事実に対する唯一の証拠方法であったとしても、本条に該当するときはこれを却下することができるとしています。
裁判の土地管轄
訴訟を提起する場合にどの裁判所に提起するかを決める基準を管轄と言い、土地との関係で問題となる管轄を土地管轄と言います。
この土地管轄に関し、民事訴訟法4条1項は、被告の生活の根拠地の裁判所に管轄権が認められる(普通裁判籍)としています。そして、この普通裁判籍は、自然人については住所(同条2項)、法人その他の社団・財団については主たる事務所または営業所の所在地、国については法務大臣の所在地(同条6項等)としています。
また、不法行為に基づく損害賠償請求訴訟では不法行為が行われた土地(同法5条9号)、財産権上の訴訟では義務履行地(同法5条1号)を管轄する裁判所にも管轄権が認められます(独立裁判籍)。
さらに、他の事件との関連から、本来管轄権の無い裁判所に管轄権が認められる場合があります(関連裁判籍、同法7条等)。
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道路の設置・管理の瑕疵と国又は公共団体の責任
国家賠償法2条1項が「道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる」と規定していることから、国道等の設置・管理の瑕疵に関して上記の責任が問題となります。
そこで、この瑕疵が問題となった裁判例を見ると、過去にしばしば落石・崩土があり管理者が「落石注意」という標識を立てる等していた国道を走行中のトラックに岩石が落下して運転者が死亡した事案に関し、最高裁昭和45年8月20日判決が、設置・管理の瑕疵は、「営造物が通常有すべき安全性を欠いていること」であるとした上で、道路管理の瑕疵を認めています。
また、国道において87時間にわたって放置されていた故障車に原動機付自転車が衝突したという事案に関し、最高裁昭和50年7月25日判決は、「道路の安全性を著しく欠如する状態であった」として、道路管理の瑕疵を認めています。
一方、工事中の道路に設置されていた赤色灯標柱等を他車が倒した直後に通行した自動車が事故を起こした事案に関し、最高裁昭和50年6月26日判決は、遅滞なく原状に復し道路を安全良好な状態に保つことは不可能であったとして、道路管理の瑕疵を認めていません。
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民間委託と国家賠償責任
行財政改革の一環として行政事務が民間に委託されることが増えていますが、事務を委託した国や公共団体の国家賠償法上の責任が問題となります。
この問題に関する裁判例を見ると、最高裁平成19年1月25日判決は、社会福祉法人が設置運営する児童養護施設の長は、本来都道府県が有する公的な権限を委譲されてこれを都道府県のために行使するものと解され、施設の職員等による養育監護行為は、都道府県の公権力の行使にあたる公務員の職務行為であるとして国家賠償法上の責任を認めています。
また、東京地裁平成19年11月27日判決は、家庭福祉員は区の公務員・被用者ではないとしながら、家庭福祉員の調査を怠り、虐待が続発するのを放置し、制度運営要綱所定の権限を行使しなかった点に過失を認め、その権限不行使が著しく合理性を欠く違法なものであるとして国家賠償法上の責任を認めています。
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文書の提出命令・送付嘱託
裁判においては所持している文書を提出してその取り調べをしてもらうことになるところ、文書を所持していなくても文書提出命令や文書送付嘱託を申し立て証拠となる文書を取り調べることが考えられます(民事訴訟法219条、226条)。
相手方当事者または第三者が提出義務を負う場合にはその相手方当事者または第三者に対し文書提出命令を申し立てることができます。また、文書の所持者に提出義務がなくても文書の送付嘱託を申し立てることができます。
なお、文書提出命令の申立ては、文書の表示・趣旨・証明すべき事実・提出義務の原因を明らかにしてしなければならないとされています(同法221条1項)が、文書の表示・趣旨を明らかにすることが「著しく困難な場合」には文書の特定に必要な情報を開示する手続き(同法222条1項)の利用が可能です。
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地代借賃増減請求事件における調停前置主義
借地借家法11条の地代若しくは土地の借賃の額の増減の請求や同法32条の建物の借賃の額の増減の請求に関する事件について訴えを提起しようとする者は、まず調停の申立てしなければならない(調停前置主義)とされ(民事調停法24条1項)、同項の事件について調停の申立てをすることなく訴えが提起された場合に受訴裁判所はその事件を調停に付さなければならないとされています(同法24条2項本文)。
このように地代借賃増減請求事件において調停前置主義が採用されているのは、少額訴訟が多いことや専門的な知識経験を有する調停委員の活用の必要性などに鑑み、訴訟による前にまず調停手続きを活用するのが好ましいためなどと言われています。
なお、受訴裁判所が事件を調停に付することを適当でないと認めるときはこの限りではないとして(同法24条2項但書)、調停前置主義の例外を認めています。
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時効の利益の放棄と時効の完成の事実の認識
「時効の利益は、あらかじめ放棄することができない」と規定する民法146条の反対解釈から時効完成後の時効の利益の放棄は認められるとされているところ、この時効の利益の放棄といえるには時効の完成の事実の認識が必要かどうかという問題があります。
この問題に関する裁判例を見ると、大審院大正4年3月11日判決や最高裁昭和35年6月23日判決などは、時効の利益の放棄には時効の完成の事実の認識が必要とした上で、時効の主張は時効の完成の事実を知ってこれをしたものと推定すると判示していましたが、最高裁昭和41年4月20日判決は、「時効完成の事実を知らなかったときでも、爾後その債務についてその完成した消滅時効の援用をすることは許されない」「けだし、時効の完成後、債務者が債務の承認をすることは、時効による債務消滅の主張と相容れない行為であり、相手方においても債務者はもはや時効の援用をしない趣旨であると考えるであろうから、その後においては債務者に時効の援用を認めないものと解するのが、信義則に照らし、相当である」と判示しています。
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裁判所による書類の送達
裁判所が当事者その他の訴訟関係人に一定の方式により書類を交付する行為を送達と言います。
送達は、送達名宛人に交付して行ない(交付送達、民事訴訟法101条)ますが、交付送達ができない場合は書留郵便で所定の場所宛に発送します(郵便に付する送達、同法107条)。そして、送達場所が不明など一定の場合には公示送達が認められます(同法110条)。
名宛人や方法を誤ると送達は無効となります。
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裁判の期日における当事者の欠席
裁判の期日に当事者の一方ないし双方が欠席した場合に訴訟の促進や出席した当事者の利益を図るため、民事訴訟法はさまざまな規定を置いています。
①最初の口頭弁論期日に一方当事者が欠席した場合には同法158条が適用され、欠席者が提出していた準備書面等に記載した事項を期日に陳述したものとみなし、出席者の弁論とつきあわせて審理を進めます。
②続行期日に一方当事者が欠席した場合には同法158条の適用はありません(なお、簡易裁判所では続行期日でも同法158条が適用されます(同法277条)。
③期日に当事者双方が欠席した場合には同法263条が適用され、一月以内に期日指定の申立てをしないと取下擬制を認め、また、一月以内に期日指定の申立てをしても連続して2回その期日に欠席すると取下擬制を認めています。
④同法244条は、当事者の双方または一方が口頭弁論期日に欠席した場合には「審理の現状及び当事者の訴訟追行の状況を考慮して相当と認めるとき」には口頭弁論を終結して終局判決ができるとしています(ただし、一方当事者が欠席した場合に口頭弁論を終結して終局判決ができるのは出席した当事者の申出のあるときとしています)。
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最寄り駅;東京メトロ南北線/都営 三田線 「白金高輪駅」 4番出口から直通で徒歩1分
(ご来所には事前の電話予約が必要です。)アクセス(地図等)
当事務所内で咲く花
時効の中断事由としての差押え、仮差押え、仮処分
時効の中断事由として、差押え、仮差押え、仮処分が規定されている(民法154条等)ところ、差押え等によって時効中断の効力が生じるのはいつか、また、時効中断の効力はいつまで続くのかという問題があります。
まず、差押え等によって時効中断の効力が生じるのはいつかという問題に関する裁判例を見ると、動産執行に関し、最高裁昭和59年4月24日判決は、債権者が執行官に対し執行の申立をした時としていますが、金銭執行に関し、最高裁昭和43年3月29日判決は、債務名義に表示の住所に執行債務者が所在しないために執行が不能に終わった場合には、同金銭債権について時効中断の効力は生じないとしています。
次に、時効中断の効力はいつまで続くのかという問題に関する裁判例を見ると、仮差押えに関し、最高裁平成10年11月24日判決は、仮差押えの執行保全の効力が存続する間は継続し、被保全債権につき本案の勝訴判決が確定しても仮差押えによる時効中断の効力が消滅するものではないとしています。また、最高裁平成6年6月21日判決は、仮差押解放金の供託により仮差押執行が取り消されても時効中断の効力は継続するとしています。
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