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間接事実・補助事実の自白
民事訴訟法179条は、「裁判所において当事者が自白した事実」「は証明することを要しない」と規定していますが、ここでの事実は、法的効果の判断に直接必要な主要事実とされ、この主要事実の存否を推認させる事実である間接事実や証拠の信用性に関する事実である補助事実などの自白の取り扱いが問題となります。
そこで、この問題に関する裁判例を見ると、最高裁昭和41年9月22日判決は、間接事実の自白は、裁判所及び自白した当事者のいずれをも拘束しないとしています。また、最高裁昭和52年4月15日判決は、補助事実である書証の成立の真正についての自白は、裁判所を拘束せず、その撤回は許されるとしています。
裁判上の自白の無効・取消・撤回
裁判所において当事者が自白した事実は証明することを要しない(民事訴訟法179条)とされ、裁判上の自白は、自白された事実についての裁判所の認定権を排除し、自白をした当事者は、自白の内容に矛盾する
この自白の無効等が問題になった裁判例を見ると、大審院大正11年2月20日判決は、裁判上の自白は原則として取り消すことはできないが、自白した事実が真正の事実に適合せず、かつ、自白が錯誤によることを自白者が証明した場合に限りその取消が許されるとし、また、最高裁昭和33年3月7日判決は、刑法246条2項に当たる詐欺行為により自白がなされた以上、自白は無効であるか又は取り消されるべきである旨の自白者の主張は「刑事上罰すべき他人の行為により、自白をするに至った」再審事由を主張するものであり、主張事実が肯認されるならば自白の効力は認められないとしています。
また、東京高裁平成元年10月31日判決は、自白が真実に反するが錯誤によらない場合であっても、自白に対する相手方の信頼をあくまで保護するのを正当とする事由に乏しいときは自白の撤回が許されるとしています。
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当事者尋問における当事者の不出頭等と虚偽の陳述に対する過料
民事裁判において、当事者本人に尋問をする手続を当事者(本人)尋問と言い、民事訴訟法207条1項は、裁判所は、申立て又は職権で当事者本人を尋問することができるとしています。そして、同法208条は、その当事者が正当な理由なく出頭や宣誓・陳述を拒否したときに、裁判所は尋問事項に関する相手方の主張を真実と認めることができるとし、同法209条1項は、宣誓した当事者が虚偽の陳述をしたときは過料の制裁をうけるとしています。
この当事者尋問に関する裁判例を見ると、当事者の不出頭に関し、東京地裁平成14年10月15日判決が、尋問の必要性を判断するのは裁判所であり、不当な質問は裁判長の訴訟指揮によって制限できるのだから、原告の不出頭に正当な理由はなく尋問事項に関する被告の主張を真実と認めることができるとしています。また、過料の裁判を求める申立権に関し、最高裁平成17年11月18日決定は、過料の裁判は裁判所が職権によって行うものであり、訴訟当事者はその裁判を求める申立権を有しないとしています。
証人義務と証言拒絶権
裁判所は、特別の定めがある場合を除き、何人でも証人として尋問できる(民事訴訟法190条)とされ、証人は、供述義務を負いますが、一定の事項に関して証言拒絶権を認められています(同法196条、197条等)。
そこで、この証言拒絶権に基づく証言拒否が問題になった裁判例を見ると、東京高裁平成4年6月19日決定は、公証人法上の守秘義務は、嘱託人の公証制度に対する信頼保護を目的とするが、公正証書遺言作成当時における遺言者の意思能力の有無が争点になっていて証書を作成した公証人の証言に代替し得る適切な証拠方法がない場合には、当該争点の判断に必要な限度で遺言者の秘密が開示されることもやむを得ないとしています。
また、東京地裁平成18年5月22日決定は、たとえ取材源として想定される者が刑罰法規で担保された守秘義務規定に違反している疑いがあっても、公益通報者保護法の趣旨からして情報を開示した者を保護するとともに国その他の公的機関や公務員による当該違法行為等を一般に開示して責任追及を可能とし再発を防止する必要があることから、取材記者は証言を拒否することができるとし、最高裁平成18年10月3日決定は、事実報道の自由は憲法二一条により保障され、報道のための取材の自由を確保する取材源の秘密は重要な社会的価値を有するから、取材源に係る証言は保護に値する秘密として原則として拒絶できるとしています。
裁判において証明の必要がない顕著な事実
裁判において判決の基礎になる事実については証明が必要となりますが、証明なくして判決の基礎になるものとして「顕著な事実」(民事訴訟法179条)があります。
この「顕著な事実」に関する裁判例を見ると、最高裁昭和28年9月11日判決が、「顕著な事実」は、公知の事実のほか、当該裁判所にとって職務上顕著な事実も含み、後者は必ずしも一般に了知されていることを要しないとしています。
また、最高裁昭和31年7月20日判決は、構成員の過半数が共通の二つの裁判所に同一取引に関する民事・刑事の両事件が同時に係属する場合において、先になされた刑事判決の理由中で一定の事実を認定したことは他の裁判所にとって顕著であるから、当事者がこれと異なる事実についての自白を取り消し刑事判決の認定に沿う事実が真実に合致すると主張するときは、その真実性を判断するに当たり前記の顕著な事実をも資料としなければならないとしています。
証拠の申出とその撤回
裁判所に対し、証拠方法の取調べを要求する当事者の申立てを証拠の申出と言います。そして、この証拠の申出は、証明すべき事実を特定してしなければならない(民事訴訟法180条1項)とされています。
この証拠の申出に関する裁判例を見ると、最高裁昭和32年6月25日判決が、証人尋問の終了後は、その申請を撤回することができないとしています。また、最高裁昭和58年5月26日判決は、いったん裁判所の心証形成の資料に供された証拠について、その申出を撤回することは許されず、裁判所は申出人に有利か否かにかかわらず当事者双方に共通する証拠としてその価値を判断しなければならないとしています。
調査の嘱託
民事裁判において、証拠の取調に関し多くの手続きがありますが、そのなかに調査の嘱託と言う制度が存在し、裁判所は、申立てまたは職権で、必要な調査を内外の官庁公署、学校、商工会議所、取引所その他の団体に嘱託することができる(民事訴訟法186条)とされています。
この調査の嘱託に関する裁判例を見ると、最高裁昭和45年3月26日判決は、調査の嘱託によって得られた結果を証拠とするには、裁判所がそれを口頭弁論で提示して当事者に意見陳述の機会を与えれば足り、当事者の援用を要しないとしています。また、大阪高裁平成19年1月30日判決は、調査嘱託として口座開設者の氏名住所等の個人情報の回答を求められた場合には、本人の同意の有無にかかわらず当然に回答する義務を負うが、これは裁判所に対する公的義務であって個々の依頼者が回答を求める権利を有しているのではないから、銀行が右情報につき回答を拒否しても不法行為の要件には該当しないとしています。
時機に遅れた攻撃防御方法の却下
民事訴訟法156条は、攻撃又は防御の方法は「訴訟の進行状況に応じ適切な時期」に提出しなければならない(適時提出主義)とし、同法157条は、当事者が「故意又は重大な過失」によって「時機に遅れて提出した攻撃又は防御の方法」について、これを審理したのでは「訴訟の完結を遅延させる」場合に申立または職権で却下しうるとしています。
この「故意又は重過失」について、大審院昭和6年11月4日判決は、第一審の口頭弁論期日に出頭しなかったために主張しなかった抗弁を控訴審で提出したのに対し、その不出頭に対する帰責事由の有無を判断せずに右抗弁を却下した原判決は違法としています。また、「訴訟の完結を遅延させる」場合について、
東京高裁平成元年3月27日判決は、自白後弁論終結までの間にこれを撤回する機会が十分ありながら格別の措置をとることなく弁論の終結を迎え、その後弁論再開の申請と共にした自白撤回の申出は訴訟の完結を著しく遅延させる時機に遅れたものとしています。なお、最高裁昭和30年4月27日判決は、申請された検証がたとえ一定の要証事実に対する唯一の証拠方法であったとしても、本条に該当するときはこれを却下することができるとしています。
裁判の土地管轄
訴訟を提起する場合にどの裁判所に提起するかを決める基準を管轄と言い、土地との関係で問題となる管轄を土地管轄と言います。
この土地管轄に関し、民事訴訟法4条1項は、被告の生活の根拠地の裁判所に管轄権が認められる(普通裁判籍)としています。そして、この普通裁判籍は、自然人については住所(同条2項)、法人その他の社団・財団については主たる事務所または営業所の所在地、国については法務大臣の所在地(同条6項等)としています。
また、不法行為に基づく損害賠償請求訴訟では不法行為が行われた土地(同法5条9号)、財産権上の訴訟では義務履行地(同法5条1号)を管轄する裁判所にも管轄権が認められます(独立裁判籍)。
さらに、他の事件との関連から、本来管轄権の無い裁判所に管轄権が認められる場合があります(関連裁判籍、同法7条等)。
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道路の設置・管理の瑕疵と国又は公共団体の責任
国家賠償法2条1項が「道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる」と規定していることから、国道等の設置・管理の瑕疵に関して上記の責任が問題となります。
そこで、この瑕疵が問題となった裁判例を見ると、過去にしばしば落石・崩土があり管理者が「落石注意」という標識を立てる等していた国道を走行中のトラックに岩石が落下して運転者が死亡した事案に関し、最高裁昭和45年8月20日判決が、設置・管理の瑕疵は、「営造物が通常有すべき安全性を欠いていること」であるとした上で、道路管理の瑕疵を認めています。
また、国道において87時間にわたって放置されていた故障車に原動機付自転車が衝突したという事案に関し、最高裁昭和50年7月25日判決は、「道路の安全性を著しく欠如する状態であった」として、道路管理の瑕疵を認めています。
一方、工事中の道路に設置されていた赤色灯標柱等を他車が倒した直後に通行した自動車が事故を起こした事案に関し、最高裁昭和50年6月26日判決は、遅滞なく原状に復し道路を安全良好な状態に保つことは不可能であったとして、道路管理の瑕疵を認めていません。
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