Archive for the ‘雇用・労働’ Category
使用者責任における「事業のために他人を使用する関係」
民法715条1項は、ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負うと規定しています。
このある事業のために他人を使用する関係に当たるとされた事例に関する裁判例を見ると、元請負人が下請負人に対して指揮・監督する権利を保有し、両者にあたかも使用者・被用者のような関係が存在する場合(大審院昭和11年2月12日判決)、貸切自動車営業者の名義を承諾を得て借用し、貸切旅客運送業を行い、名義料・諸税費用を支払い、かつ名義貸与者のもとに起居し同人の倉庫に自動車を格納している場合(大審院昭和11年11月13日判決)、下請負人の被用者に対し、元請負人が下請負人と同様の指揮・監督をしていた場合(最高裁昭和45年2月12日判決)、兄が弟に兄所有の自動車を運転させこれに同乗して自宅に帰る途中、助手席で運転の指示をしていた等の事情がある場合(最高裁昭和56年11月27日判決)などにおいてこの関係に当たるとされています。
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取引行為に関する使用者責任における「事業の執行について」
ある事業のために他人を使用する者(使用者)または使用者に代わって他人を監督する者(代理監督者)は、その他人(被用者)が「その事業の執行について」第三者に加えた損害を賠償する責任を負う(使用者責任、民法715条)とされているところ、その他人(被用者)の行為が「その事業の執行について」に当たるかどうかが問題となります。
この他人(被用者)の行為が「事業の執行について」に当たるかどうかが取引行為に関して問題となった裁判例を見ると、銀行の支店長が不良貸付金の回収のために支店長名義で靴下を購入しこれを処分した場合(最高裁昭和32年3月5日判決)、かつて手形作成準備業務を担当していた者が会計係員として割引手形を銀行に使送などする職務に配転した後に手形を偽造した場合(最高裁昭和40年11月30日判決)に事業の執行に当たるとしています。
一方、会社において通勤等に自家用車を利用することが禁止され、出張の際も許可が必要とされており、又、本件出張についても特急列車を利用すれば十分間に合ったのに会社の業務に関して平素自家用車を用いたこのない者が会社に届け出ることなく自家用車を用いて出張した場合(最高裁昭和52年9月22日判決)、郵便局に所属する保険外務員が詐欺により簡易保険の契約者を誤信させ、契約者貸付けの方法を教示するなどして郵便局から金員を借り入れさせた上、その金員の融資を受けた場合(最高裁平成15年3月25日)に事業の執行に当たらないとしています。
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証人義務と証言拒絶権
裁判所は、特別の定めがある場合を除き、何人でも証人として尋問できる(民事訴訟法190条)とされ、証人は、供述義務を負いますが、一定の事項に関して証言拒絶権を認められています(同法196条、197条等)。
そこで、この証言拒絶権に基づく証言拒否が問題になった裁判例を見ると、東京高裁平成4年6月19日決定は、公証人法上の守秘義務は、嘱託人の公証制度に対する信頼保護を目的とするが、公正証書遺言作成当時における遺言者の意思能力の有無が争点になっていて証書を作成した公証人の証言に代替し得る適切な証拠方法がない場合には、当該争点の判断に必要な限度で遺言者の秘密が開示されることもやむを得ないとしています。
また、東京地裁平成18年5月22日決定は、たとえ取材源として想定される者が刑罰法規で担保された守秘義務規定に違反している疑いがあっても、公益通報者保護法の趣旨からして情報を開示した者を保護するとともに国その他の公的機関や公務員による当該違法行為等を一般に開示して責任追及を可能とし再発を防止する必要があることから、取材記者は証言を拒否することができるとし、最高裁平成18年10月3日決定は、事実報道の自由は憲法二一条により保障され、報道のための取材の自由を確保する取材源の秘密は重要な社会的価値を有するから、取材源に係る証言は保護に値する秘密として原則として拒絶できるとしています。
証拠の申出とその撤回
裁判所に対し、証拠方法の取調べを要求する当事者の申立てを証拠の申出と言います。そして、この証拠の申出は、証明すべき事実を特定してしなければならない(民事訴訟法180条1項)とされています。
この証拠の申出に関する裁判例を見ると、最高裁昭和32年6月25日判決が、証人尋問の終了後は、その申請を撤回することができないとしています。また、最高裁昭和58年5月26日判決は、いったん裁判所の心証形成の資料に供された証拠について、その申出を撤回することは許されず、裁判所は申出人に有利か否かにかかわらず当事者双方に共通する証拠としてその価値を判断しなければならないとしています。
民間委託と国家賠償責任
行財政改革の一環として行政事務が民間に委託されることが増えていますが、事務を委託した国や公共団体の国家賠償法上の責任が問題となります。
この問題に関する裁判例を見ると、最高裁平成19年1月25日判決は、社会福祉法人が設置運営する児童養護施設の長は、本来都道府県が有する公的な権限を委譲されてこれを都道府県のために行使するものと解され、施設の職員等による養育監護行為は、都道府県の公権力の行使にあたる公務員の職務行為であるとして国家賠償法上の責任を認めています。
また、東京地裁平成19年11月27日判決は、家庭福祉員は区の公務員・被用者ではないとしながら、家庭福祉員の調査を怠り、虐待が続発するのを放置し、制度運営要綱所定の権限を行使しなかった点に過失を認め、その権限不行使が著しく合理性を欠く違法なものであるとして国家賠償法上の責任を認めています。
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民法715条、同法709条による使用者・被用者の責任と国家賠償法1条
民法715条や同法709条によって使用者や被用者が損害賠償責任を負うことがありますが、国や公共団体が国家賠償法1条1項に基づく責任を負う場合に公務員個人に対して直接損害賠償を請求できないとされている(最高裁昭和30年4月19日判決等)ことが上記の責任にどう関係するかが問題となります。
この点に関する裁判例を見ると、国・公共団体以外の者の被用者が第三者に損害を加えたが国・公共団体が同法1条1項に基づく損害賠償責任を負う場合について、最高裁平成19年1月25日判決は、被用者個人が民法709条に基づく損害賠償責任を負わないだけでなく、その使用者も同法715条に基づく損害賠償責任を負わないとしています。
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傷病により就業できない場合における給付金
勤務先の倒産等によって失職したことから失業の認定を受ける場合、公共職業安定所に出頭して職業の紹介を求めることになります(雇用保険法15条、雇用保険法施行規則22条)が、傷病等により継続して15日以上職業に就くことができなくなった場合、基本手当に代えて傷病手当が支給されます。
そして、この傷病手当の日額は、基本手当の日額に相当する額で、その支給日数は、基本手当の所定給付日数から既に支給を受けた基本手当の日数を差し引いた日数が限度とされています(以上につき、雇用保険法37条)。
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扶養されていた配偶者が離婚した後の年金
厚生年金に加入している夫の被扶養者となっている妻は、被保険者年金(厚生年金・共済年金)の被保険者の被扶養配偶者として国民年金の第3号被保険者になりますが、離婚して就職しない場合、国民年金の第1号被保険者になります。
そこで、この場合、第1号被保険者への種別変更の届出が必要になります(以上につき、国民年金法7条、12条等)。第1号被保険者の届出は、住所地の市区町村役場で行います。
そして、第1号被保険者になった月から保険料を納付することになります(同法87条等)。
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失業等給付を受給中に死亡した場合の遺族の受給権
失業等給付の支給を受けることができる者が死亡した場合においてまだ支給されていないものがあるときに未支給の保険給付を受けるべき者は、その未支給の失業等給付の支給を請求することができます。
そして、死亡した者の配偶者、父母、孫又は兄弟姉妹でその者の死亡の当時その者と生計を同じくしていた者がこの未支給の失業等給付を受けるべき者とされています(以上について雇用保険法10条の3)。
この未支給の失業等給付の請求は、受給資格者等が死亡したことを知った日の翌日から起算して1か月以内に行うことになりますが、受給資格者等が死亡した日の翌日から起算して6か月を経過したときには行うことができない(雇用保険法施行規則17条の2)とされています。
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事業の縮小のため解雇された場合の失業等給付
そして、その要件は、
①離職による被保険者資格喪失の確認を受けたこと
②労働の意思及び能力を有するにもかかわらず職業に就くことができない状態にあること
③特定受給資格者、特定理由離職者は、原則として、離職の日以前1年間に被保険者が6か月以上あること(雇用保険法13条、14条)で、事業の縮小や廃止などにより解雇された場合は、特定受給資格者となります(同法23条等)。
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