Archive for the ‘雇用・労働’ Category

試用期間と本採用の拒否

2022-02-07

   企業による労働者の採用において試用期間と本採用の拒否という問題があります。

   この問題に関する裁判例を見ると、最高裁昭和48年12月12日判決(三菱樹脂事件)が、一定の合理的な期間解約権を留保する試用期間を定めることも合理性をもち有効であるとした上で、いったん特定企業との間で試用期間を付して雇用関係に入った者は、当該企業との雇用関係の継続の期待の下に他企業への就職の機会と可能性を放棄したものであることを考慮すると、右の留保解約権の行使は、解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認される場合にのみ許されるとしています。なお、契約の期間の定めか試用期間であるかが問題となった事案について、最高裁平成2年6月5日判決は、労働者の新規採用に当たり、その適性を評価・判断するために雇用契約に期間を設けた場合に、右期間の満了により契約が当然に終了する旨の明確な合意が成立しているなどの特段の事情が認められる場合を除き、右期間は契約の存続期間ではなく試用期間であると解するのが相当であるとしています。


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採用内定とその取消の可否

2022-01-31

   企業による労働者の採用過程にはいくつかの段階があるところ、いわゆる採用内定という段階の法的性質やその取消の可否が問題となることがあります。

   この問題に関する裁判例を見ると、最高裁昭和54年7月20日判決は、本件採用内定通知と誓約書の提出があいまって、企業と採用内定者との間に、就労の始期を大学卒業直後とし、それまでの間誓約書記載の取消事由に基づく解約権を留保した労働契約が成立したといえるとした上で、右の留保解約権に基づく採用内定の取消事由は、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であってこれを理由として採用内定を取り消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認できるものに限られるとしています。そして、最高裁昭和55年5月30日判決は、市公安条例等違反の現行犯として逮捕され、起訴猶予処分を受ける程度の違法行為をした事実が判明しこのことを理由になされた採用内定の取消しは、解約権留保の趣旨、目的に照らして社会通念上相当として是認することができるとしています。


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採用の自由とその法律による制限

2022-01-24

 労働者の採用について、企業には採用の自由が認められます。

 この企業の採用の自由について、最高裁昭和48年12月12日判決(三菱樹脂事件)は、「企業者は」「契約締結の自由を有し、自己の営業のために労働者を雇用するにあたり、いかなる者を雇い入れるか、いかなる条件でこれを雇うかについて、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由にこれを決定することができる」としています。

 もっとも、法律による制限として、①男女雇用機会均等法による募集・採用における女性差別の禁止、②労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律9条による「年齢にかかわりなく均等な機会を与え」ることの義務付け、③障害者の雇用の促進等に関する法律34条による募集・採用時における障害者の差別禁止が存在します。


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労使慣行の法的効力

2022-01-17

   労働条件に関する事項などについて就業規則・労働協約に規定はないが労働者と使用者との間のルールになっているものを労使慣行と言います。

   この労使慣行に関する裁判例を見ると、大阪高裁平成5年6月25日判決が、法的効力のある労使慣行が成立していると認められるためには、同種の行為又は事実が一定範囲において長期間反復継続して行われていたこと、労使双方が明示的にこれによることを排除・排斥していないことのほか、当該慣行が労使双方の規範意識によって支えられていることを要するとしています(最高裁平成7年3月9日判決はこの結論を是認しています)。


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就業規則の合理性と就業規則の拘束力

2022-01-11

   労働者の労働条件を決めるものとして就業規則が存在し、労働契約法7条は、「使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする」と規定しています。

   上記の就業規則の合理性や拘束力が問題となった裁判例を見ると、最高裁昭和61年3月13日判決は、就業規則が労働者に対し一定の事項につき使用者の業務命令に服すべき旨を定めているときは、そのような就業規則の規定内容が合理的なものである限りにおいて当該具体的労働契約の内容をなしているものということができ、使用者はこの労働契約に基づいて業務命令を発することができるとしています。

   また、最高裁平成15年10月10日判決は、就業規則が法的規範としての性質を有するものとして拘束力を生ずるためにはその内容を適用される事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要するとしています。


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労働組合の自主性

2022-01-05

   労働組合は、「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体」(労働組合法2条本文)と定義されているところ、同法はその但書1号において「使用者の利益を代表する者」が参加してはならないとしていることから、管理職組合などが本条の労働組合に当たるのかが問題となります。

   この問題に関する裁判例を見ると、東京高裁平成12年2月29日判決が、使用者の利益代表者の参加を許す労働組合は、本条の要件を欠き労組法5条1項により労働委員会の救済手続を享受することはできないが、かような組合も使用者と対等関係に立ち自主的に結成された統一的な団体であれば同法7条2号の「労働者の代表者」に含まれるので、利益代表者の参加により適正な団体交渉の遂行を期し難い特別な事情を使用者において明らかにした場合は格別、当該組合に利益代表者が参加していたとしても、また参加していないことを使用者に対し明らかにしていないとしてもそのこと自体が団体交渉拒否の正当な理由になるものではないとして、本件組合は本条の労働組合に当たるとしており、最高裁平成13年6月14日決定は、この上告を棄却しています。


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労働組合法における「労働者」

2021-12-27

   労働に関するルールを定める法を労働法といいますが、この労働法の中に労働組合の組織と活動を規定する労働組合法が存在します。そして、同法の3条は、「労働者」について「職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活をする者」と定めているところ、この「労働者」への該当性が問題となります。

   この労働組合法における「労働者」への該当性が問題となった裁判例を見ると、最高裁昭和51年5月6日判決は、民間放送会社とその放送管弦楽団員との間に締結された放送出演契約において、楽団員の他社出演が自由とされ、また、会社からの出演発注を断ることも文言上は禁止されていないという場合であっても、会社において必要とするときは随時その一方的な指定によって楽団員に出演を求めることができ、楽団員が原則としてこれに従うべき基本的関係が存在し、また、楽団員の受ける出演報酬が演奏の芸術的価値を評価したものというよりはむしろ演奏という労務の提供それ自体の価値とみられるなどといった事情が存在するときは、楽団員はこの「労働者」にあたるとしています。なお、この問題に関する比較的近時の最高裁判例として、最高裁平成23年4月12日判決や最高裁平成24年2月21日判決があります。


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使用者責任における「事業のために他人を使用する関係」

2021-11-22

   民法715条1項は、ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負うと規定しています。

   このある事業のために他人を使用する関係に当たるとされた事例に関する裁判例を見ると、元請負人が下請負人に対して指揮・監督する権利を保有し、両者にあたかも使用者・被用者のような関係が存在する場合(大審院昭和11年2月12日判決)、貸切自動車営業者の名義を承諾を得て借用し、貸切旅客運送業を行い、名義料・諸税費用を支払い、かつ名義貸与者のもとに起居し同人の倉庫に自動車を格納している場合(大審院昭和11年11月13日判決)、下請負人の被用者に対し、元請負人が下請負人と同様の指揮・監督をしていた場合(最高裁昭和45年2月12日判決)、兄が弟に兄所有の自動車を運転させこれに同乗して自宅に帰る途中、助手席で運転の指示をしていた等の事情がある場合(最高裁昭和56年11月27日判決)などにおいてこの関係に当たるとされています。


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取引行為に関する使用者責任における「事業の執行について」

2021-07-19

 ある事業のために他人を使用する者(使用者)または使用者に代わって他人を監督する者(代理監督者)は、その他人(被用者)が「その事業の執行について」第三者に加えた損害を賠償する責任を負う(使用者責任、民法715条)とされているところ、その他人(被用者)の行為が「その事業の執行について」に当たるかどうかが問題となります。

 この他人(被用者)の行為が「事業の執行について」に当たるかどうかが取引行為に関して問題となった裁判例を見ると、銀行の支店長が不良貸付金の回収のために支店長名義で靴下を購入しこれを処分した場合(最高裁昭和32年3月5日判決)、かつて手形作成準備業務を担当していた者が会計係員として割引手形を銀行に使送などする職務に配転した後に手形を偽造した場合(最高裁昭和40年11月30日判決)に事業の執行に当たるとしています。

 一方、会社において通勤等に自家用車を利用することが禁止され、出張の際も許可が必要とされており、又、本件出張についても特急列車を利用すれば十分間に合ったのに会社の業務に関して平素自家用車を用いたこのない者が会社に届け出ることなく自家用車を用いて出張した場合(最高裁昭和52年9月22日判決)、郵便局に所属する保険外務員が詐欺により簡易保険の契約者を誤信させ、契約者貸付けの方法を教示するなどして郵便局から金員を借り入れさせた上、その金員の融資を受けた場合(最高裁平成15年3月25日)に事業の執行に当たらないとしています。

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証人義務と証言拒絶権

2021-06-14

 裁判所は、特別の定めがある場合を除き、何人でも証人として尋問できる(民事訴訟法190条)とされ、証人は、供述義務を負いますが、一定の事項に関して証言拒絶権を認められています(同法196条、197条等)。

 そこで、この証言拒絶権に基づく証言拒否が問題になった裁判例を見ると、東京高裁平成4年6月19日決定は、公証人法上の守秘義務は、嘱託人の公証制度に対する信頼保護を目的とするが、公正証書遺言作成当時における遺言者の意思能力の有無が争点になっていて証書を作成した公証人の証言に代替し得る適切な証拠方法がない場合には、当該争点の判断に必要な限度で遺言者の秘密が開示されることもやむを得ないとしています。

 また、東京地裁平成18年5月22日決定は、たとえ取材源として想定される者が刑罰法規で担保された守秘義務規定に違反している疑いがあっても、公益通報者保護法の趣旨からして情報を開示した者を保護するとともに国その他の公的機関や公務員による当該違法行為等を一般に開示して責任追及を可能とし再発を防止する必要があることから、取材記者は証言を拒否することができるとし、最高裁平成18年10月3日決定は、事実報道の自由は憲法二一条により保障され、報道のための取材の自由を確保する取材源の秘密は重要な社会的価値を有するから、取材源に係る証言は保護に値する秘密として原則として拒絶できるとしています。

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